大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

劇画(102) 上村一夫 16 「マリア」

今夜は上村一夫先生の「マリア」(ワイズ出版刊)です。
KAMIMURA-maria.jpg

1971年から翌年まで漫画アクション(双葉社刊)にて連載されたファンには有名な作品ですが、かつてアクションコミックスのB5判サイズで一度まとめられた事があるものの長らく単行本にはなっておらず、またそのアクションコミックス版は全20話のうち13話までしか収録されていなかった…
それが2003年についに上・下巻の全2巻で単行本化され、それも全話無修正収録した完全版という事で、この時に私が飛びついたのは言うまでもありません。


都下私立愛蘭女子学園…その授業中に起きた突然の雷雨の中、校庭に乱暴な運転で入ってきたロールスロイス。
そこから降りてきたのは美少女は転校生のマリアこと三条麻里亜で、車も運転手からハンドルを奪って初めて自分で運転してみたようです。

転校初日から番長と闘い、マリアに惚れた二つのスプーンのマークを制服に縫い付けてるクラスメイトの前で全裸になってレズ行為、それも青姦を行う…というのが第1話目。
あ、スプーンってレズビアンのシンボルらしいです。

2話目でマリアの家族が紹介されますが、三条家の実権を握る独裁者の祖父と美しい母がいて、自殺した父の後に婿入りした養父(妖父)はホモ!
次に出会うのは辺り一帯の高校の大番長である桐人(きりひと)。日本の漫画では良くキリスト的な奴を『きりひと』という名で登場させますが、本作の主人公であるマリアはキリスト教の聖母と同じ名前。
やはり桐人はマリアの相手役で、彼の家庭もまた酷い畸形家族。二百年続いた華道の蒼星流という家柄なのですが、それを仕切る母は息子である桐人と肉体関係を持ち続ける盲目の女。父は病の床にある…と。
それから殺し殺されのいろんな破滅を迎える。

ホモやレズは当たり前、近親相姦に自殺に殺人…もうタブーの大安売りといった状態ですが、その中で芸術的な描写と凄い画力、言葉でも文学的な表現がふんだんにあり、まぁとにかくいい時代の上村一夫作品らしいセンスが満載の傑作、というわけですね。

前半だけでお腹一杯になりそうですが、
『わたしはお母さまのように 耐えることに快感を覚える女にはなりたくない
今日かぎり学校を止めます
ええ教科書には わたしの知りたいことは 何も書かれていないし………
風に吹かれてさまよいながらでも自分なりに生きてみたい』

というわけでマリアは大金持ちの家から出て、バッグ一つ持って1人で生きていく事になります。
そして後半に当たる下巻部分では、流れるままに棲みついた田舎の農村でのマリアの生き様が描かれるのです。

死んだ桐人の子を妊娠している事が発覚しますが、里に似合わぬ美人のマリアは田舎者特有の差別を受け、またさらなる弱者やヤバイ殺人も描かれますが、話の進行するペースがゆっくりになっていて悲しい話や人間の醜さは際立って刺さる。
そして次の漁村で出会った屈強な海の男とは、生まれた桐人の子と共に幸せな家庭を築く事を暗示して作品も終わる…つまり、今までマリアと関わった多くの者は不幸な結末を迎えてきましたが、マリア自身はハッピーエンド!

とはいえ作品で描かれたマリアの波瀾万丈な半生は、まだ成人もしていない時代だけなわけで、今後も気になります。
ただこの周りの人間を惹きつけたり不幸にしたりする力…ある種のカリスマみたいな物が描かれていて、もちろん読者にも伝わってきますし、田舎の漁村の主婦では終わるわけがないのかもしれません。

他にも文章で書いていてはキリがないほど、魅力的な上村一夫先生の表現力や名シーンには痺れます。
現在の漫画界にはないこんな作品を読むにつけ、古本を漁っていると起こる出会いに感謝し、1970年代初頭の作品が好きで良かった、とか思うのです。


桐人 お別れに来たわ
あなたが自分自身のために死を選んだように
わたしは自分自身のために生きようと思う
いつかはどんな形であれ あたしだって死んでしまう
だから生きたいの

あなたもあたしも同じ奇形家族の中ではぐくまれた
あなたは華道の名家の長男 あたしは戦後成金の長女………
それだけのほんの少しの違いだけで あなたは死に急ぎ あたしは生きのびた
因果と言ってしまえばそれまでだけど
因果の語意は学校では教えてくれない

だから……教えてくれないことを知るために あたしは生きたい
でもいつかは あなたのそばに行く……



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  1. 2009/11/12(木) 23:10:22|
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

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