大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

梶原一騎(39) 上村一夫 17 「昭和一代女」

今夜は梶原一騎原作、上村一夫絵による「昭和一代女」(講談社刊)です。
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1977年に創刊されたアパッチという雑誌で、創刊号から翌年まで連載された作品で、単行本は全1巻。

私にとっては一番好きな原作者・梶原一騎先生と一番好きな劇画家・上村一夫先生という組み合わせなので超重要作品扱い、単行本も激レアで…そして面白いです。

何しろ"昭和の絵師"が作画を担当してますので、梶原一騎原作にしては男臭さや根性の要素は抑えて、梶原作品でもう一つの重要な要素である文学性を前面に出しています。
戦中→戦後が舞台になっている事もあり、ちょうど名作「おとこ道」に近い感じでしょうか。実際に共通する部分が多々あります。
上村一夫先生の仕事としても違和感は無く、前回紹介した「マリア」と同じく1人の女の人生を追っています。


あの大東亜戦争の最中で反国家的な言辞のため特高警察に睨まれた評論家の鷹野壮介
彼が特高から隠れて潜伏していた留守中に妻の香子が連れて行かれ、素っ裸にされたうえ激しい拷問を受けて病に倒れ、東京中をB29が爆弾を一般市民の頭上に落としまくっている中…ついに力尽きて死んでしまいました。
その二人の落とし種である一人娘こそが「昭和一代女」の主人公、鷹野翔子です。

すぐに終戦を迎え、それまで良家に生まれ育った幼い翔子も母は死に父は行方不明で、戦災孤児として盗みを働きながら生き延びていました。
そしてアメ公相手のパンパンの所で居候してトラブルに巻き込まれたりしながらも、さらにたくましく生き続けます。

次に登場する時はナイフ使いの名人・山猫ショーコとしてズベ公どもを率いて上野で縄張りを持っています。
そして占領軍の黒人兵士ともめた時、現在は国鉱会なる暴力団まがいの小右翼団体を率いている父・壮介と偶然にも再会するのです。
しかし父は、かつて母が拷問を受けていた時に隠れていて助けなかった事を知り、戦中に母を連れ去って拷問した特高の男に復讐を果たすと父の元から去り、再び孤児生活に戻ってケンカに明け暮れ…ついには女子教護院・愛聖女子学園へ送致されます。

おっ、梶原一騎作品で教護院といえば…そう!ここでも出ました!!
個室の先輩達による『ネジリン棒』『パラシュート部隊』等の拷問です。女子が主人公のお話でも、やはりこれは出ます。
「あしたのジョー」と同じように、豚の大暴走もあります。

ただし翔子は徹底的に抵抗し、その腕と頭脳から部屋ボス連合を全員やり込めて教護院のボスにまでなりました。
またここでの重要な出会いは、ミスター・ナメクジなどと呼ばれているインテリ教官・矢崎慎之介
彼は他のいやらしい教官達、また見てきた大人達とは違うと感じました。
『なんだか自分でもよくわからないけど…よくわからないって悪い気分じゃない
よくわかって見えすいた人間ばかりだもの』

というわけで、肉体的には自分よりずっと弱い彼に対して、憧れの気持ちを持ちます。
実は知的な父への本能的な憧れの代用といった隠れた部分もあるのですが、とにかくこれから大人になっていく翔子の心理描写が上手いですよ。

もはや教護院で圧倒的な力を持つボスになった翔子でしたが、憎いはずの父が狙撃されて重態だと知ると脱走して仇を討ちにいくのです。
仇であるカミカゼ敬は気が狂い、危ない所を自分の体と引き換えに救ってくれた義理の母・藤江が女将を務める赤坂の料亭"万竜"で働くようになりました。
元々お人形さんのような顔をしていた翔子ですが、大人になって美しさに磨きがかかった六年後の晩秋、今や文学賞受賞の新進作家となった矢崎と再会し、ついに処女を捧げるのです。

『法悦境・・・・法悦境だ!』とその美しい体を味わう、羨ましすぎる矢崎。
事が終わってベッドに仰向けで横たわる二人ですが、翔子は無表情のまま矢崎のある部分を握ってます。エロいです。
この時は大人の女になっていても、まだ未成年ではある翔子。もっと前の幼女時代にもヌードになったり他のヤバイ性描写もありますから、それもこの作品が復刻されない理由の一つなのでしょうか。

作品はもうクライマックス。その後の翔子は清駒の名で芸者として披露目をし、政治家や政界名門の男達と次々浮き名を流して昭和一代女、どこまで行くのか…といった所で終わり。
その影に矢崎の謎の自殺、他にも様々な悲劇があるのですが、矢崎が回想したスタンダールだったかリラダンかの言葉で、『真に魅力的な女は男を破滅させずにはおかぬ』というのがあるそうです。

そんな所も上村一夫先生が描く主人公っぽいし、もちろん絵は文句無しに良い。
文芸色を強く出した梶原一騎原作も良くて、らしいセリフがいくつも出てきて嬉しく思います。
今ではあまり想像出来ないこの超個性二人の組み合わせですが、相性はいいんですよ。
物語としてもまだ翔子が活躍していく途中で、これから何をやるのか見たいのに…単行本で全一巻、『朱の章』のみで終了した理由は、掲載誌であるアパッチの廃刊でした。
作者の巨星二人ともが今や墓の中。失われた鷹野翔子の物語、続きはあの世に持ち越しです。


女に白状させる極意は まずその気どり 虚飾から引き剥ぐこと
すなわち素っ裸に剥きあげることよ!
柳橋一とウグイス啼かせた玉の肌を
隅の隅まで晒す覚悟あってのことかな?
フッフッフッ
脱げい!! 丸裸を晒すんじゃ!!




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  1. 2009/11/15(日) 23:11:35|
  2. 梶原一騎
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

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