大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

梶原一騎(41) 松久由宇 1 「哀愁荒野」

今回は梶原一騎原作、松久由宇作画の「哀愁荒野」(集英社刊)です。
KAJIWARA-MATSUHISA-aisyu-kouya1-2.jpg
連載は1979年から1981年のヤングジャンプで、単行本が全4巻。

数ある梶原一騎原作漫画の中で、これは無名作品の部類に入るでしょうね。
今作の作画担当は松久由宇先生ですが、自身の代表作である「風の戦士 -WIND SOLDIER-」「魔獣戦士」等のようなSFだとかバイオレンスの要素は全く無く、また梶原原作から荒唐無稽さが無くなった時代の作品でもあり、地味な内容です。

松久由宇先生を簡単に紹介すると、北海道出身で吾妻ひでお先生の高校時代の同級生にして漫画家を目指すきっかけを作った人物。
上京して桑田次郎先生のアシスタントになり、あの平井和正原作による名作「デスハンター」も主力として描いていたとか。
ちなみに私が初めて出会った松久由宇作品は、小池一夫原作の「I・餓男 アイウエオボーイ」でした。
これは池上遼一先生の代役でラスト近くなってから描いたものですが…
表紙を見るだけで分かるように情緒豊かな絵柄で画力も高く、「哀愁荒野」では暗い劇画調で梶原一騎ワールドを描いていますが、オリジナル作品はSFが中心。


さて、「哀愁荒野」のページをめくると…いきなり第1話目から、絵の中に写真が何度も大胆にフィーチャーされています。
これは実験的な作品なのか?・・・と思いきや後から普通になるし、背景を絵で描く画力が無いわけないので、多分時間がなくてやむを得ずやった事でしょう。

主人公は浅草の鉄火娘・花輪京子。地元の大イベントである祭りで威勢よく御輿に号令かけていた時に現れたのは兄・花輪竜之介
竜之介の出現で場は騒然となりますが、それもそのはず。彼はかつて障害事件を起こして逮捕され、6年ぶりに網走刑務所から帰った身なのでした。
また京子とは異母兄弟であり、京子は密かに義兄を愛し、また竜之介も妹を…
といった所で二人の愛を描くのかと思われたのが作品当初。

母や弟・新一のために中学卒業してから"小料理 お京"でお客に愛想を振りまいて稼いでいる京子18歳、そして店に迷惑がかかるからと網走から戻ってすぐにまた出て行った竜之介の不幸な過去の出来事や状況が分かってきます。
そして肉体労働で稼ぐようになったこの竜之介、男の中の男ってやつです。
出て行かれても日々思慕の念が募ってしょうがない京子は、お店でお色気を売りにする"浅い川"という踊りをした事で兄に呼び出されてぶたれるのですが、それで『あたしが悪い事をすれば 招き猫のようにおにいちゃんを呼べる』と気付いてしまう始末。

そして兄を呼ぶために店に通いつめるキザな青年社長に付き合って危ない目に合い、後でお礼参りに雇われたヤクザ達から助けてくれたのはやはり竜之介。ちなみに竜之介は、ケンカがメチャクチャ強いです。
その男…いや、漢である竜之介は若い女の色気を放ちまくる京子に海で全裸にて『抱いて』と迫られても、自分の眼に砂をぶち込んで
『ハハッ…ハーッハッハッハ ハハ……!!
こ…これで京子 おまえの体を見ようったって見えやせん!
投げ与えられたエサに飛びつく野良犬のように おれが負けることもないッ』

とまで徹底して兄妹の関係でいようとするほど。
その直後からんできた暴走族をブッ飛ばして、メンバーにいた女を犯すという弱さも見せますが。

それから店を潰されて浅草の"クラブZaZa"へ通うようになった京子は、すぐにその美貌からスカウトされて銀座の"エーゲ海"へ進出。
かつて竜之介を貶めた裏切り者・千鶴との女の戦いに勝利します。しかしどうせ兄に抱いてもらえなかった体は金持ちの大越というハゲ専務に捧げる事になり…そうな所でまたも、それもラブホテルまで現れた竜之介!
ハゲを追い払った後で、どうせ利用価値のある相手と寝る女ならばおれが奪っておくと、そんな理由ですがついに義理の兄妹二人は結ばれる事となるのです。ちなみに京子はこの時点ではギリギリ処女でした。
そして一時の同棲生活が始まるのですが、妹のヒモのような生活に竜之介が耐えられるわけもなく、京子が他の男に少しでも心を動かされたとしるや出て行く…

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この辺りから「哀愁荒野」『銀座ホステス漫画』となり、いかに客と駆け引きして銀座で儲けていくかといった内容が増えていくのですが…
悲しむ京子は次の恋人にプロ野球のホームラン王である西崎を選び、しかし例の大越専務に圧力をかけられて"エーゲ海"はクビ。
しかしほどなくして京子に付いていた地方出身有力者の客と、銀座の夜を知り尽くした"エーゲ海"の凄腕マネージャーの協力で自分の店"クラブ 花輪"を持つ事になりました。
こうして19歳の銀座一若いママが誕生した矢先、さらに大越専務に雇われたヤクザ達に拉致された京子は拷問を受け、同じく拉致されていた恋人の西崎は京子の体より自分の小指を大事にする情けない男だったと露呈。
もはや絶対絶命の時に、またしても救ってくれたのは竜之介!!

この時は気絶していた京子と対面すらしなかった竜之介ですが、今後も陰ながら力になり…いや陰すぎて作中ほとんどどうでもよい存在になってしまうのです。
作品開始時の少女と同一人物とは思えないほどスレていった京子は銀座で見事にのし上がり、あずさジョージというキザな作詞家を経て、俳優の丘田公次なる運命の恋人に出会います。
スポーツ新聞等で叩かれまくった京子は、学校でバカにされた弟の新一から激しい暴力を受けたりもしますが、華厳の滝や中禅寺湖といった栃木県日光市デートで丘田の悲しい過去や優しさの原点を知って心を決めます。
その数三千店とも言われる銀座のバー・クラブの中でもトップクラスの繁盛をしている"クラブ 花輪"を閉めて海外へ旅立つ丘田に付いて行く、と。

常に縁の下の力持ちになってくれたマネ-ジャ-曰く、これは銀座ママなら誰でも一度ならず立たされる正念場であり、男の魅力に負けて去るか勝ち残って銀座に君臨するかの分かれ道。
それでもやはり彼の気持ちに応えず裏切って去る決意を固めている京子に対し、初めて愛の告白をした直後に殺すとナイフを付き向けるマネ-ジャ-!ママを殺して自分も死ぬと、陳腐な展開になりましたが、可哀想な男です。
もちろんここで、竜之介の登場ですよね。

原作者・梶原一騎先生自身の銀座遊びから生まれたであろう、意外と知られざる方面の才能も見せた「哀愁荒野」は、今読んでもリアルな心理かけひきやセリフの妙が素晴らしいし、松久由宇先生の美しい絵にも満足です。
最終4巻の巻末には読み切り短編「三つの星」という、悲しい三兄弟を描いた作品が併録されています。


おたがい獣になるんだっ
獣が人間きどりで ぶっ喋るとブチのめすぞ!



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  1. 2010/03/15(月) 23:10:34|
  2. 梶原一騎
  3. | トラックバック:0
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コメント

これまたいいですね~!

これまた読みたくなりました。¨吾妻ひでおさんと縁がある人が梶原原作を劇画化する¨という事実はスリリングです(笑)。松久由宇さんはたしか私の愛読誌だった「マンガ少年」にも作品を発表していたような気がします。う~またまた¨なかなか手には取れない¨作品に恋してしまいました。
  1. 2011/01/20(木) 11:47:37 |
  2. URL |
  3. 秀和 #-
  4. [ 編集]

ホステス立身出世物語!?

>秀和さま

これがヒットしていれば、他にも松久由宇先生がもっと梶原一騎原作を手がける事態になっていたのかもしれないのですが…
「哀愁荒野」は梶原作品としては異色作ですが、やはり梶原先生でなくては書けない原作だと思います。
  1. 2011/01/21(金) 20:27:37 |
  2. URL |
  3. BRUCE #-
  4. [ 編集]

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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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