大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

梶原一騎(42) 川崎のぼる 3 「花も嵐も」

今夜も梶原一騎原作作品で続けまして、そろそろ「花も嵐も」(集英社刊)にいきましょう。
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1975年の週刊少年ジャンプにて連載された作品で、単行本はジャンプスーパーコミックスの全3巻。

今作での作画担当は、川崎のぼる先生です。
梶原一騎川崎のぼるコンビといえば両者の代表作…というより日本の漫画史における金字塔である「巨人の星」(そして続編の「新・巨人の星」)を誰もが思い出すでしょうが、他にもずっと前に「ココ」「ココ」で紹介していた「男の条件」があり、そして今回紹介する「花も嵐も」があるのです。

今まであまり書いてきませんでしたが、実は私は幼少時代から川崎のぼる先生の大ファン。
大阪府出身で少年時代は長崎県に疎開し、もちろん東京での長い漫画家活動で巨匠になったわけですが、10年ほど前から何故か熊本県菊池郡に在住して絵本作家活動等をしています。
その熊本県菊池郡は私の祖母や叔父・従兄弟達が住んでいる地であり、昔は何度も行った事もある土地…1941年生まれですからけっこうな高齢となった川崎のぼる先生ですが、元気なうちにお会いして、お話もしてみたいです。

原作無しのオリジナル作品、または梶原一騎先生以外の原作付き作品にももちろん傑作は多く、「いなかっぺ大将」は小学生時代に何十回読んだか分かりませんし、「死神博士」「ムサシ」「荒野の少年イサム」「アニマル1」「てんとう虫の歌」「フットボール鷹」…他、劇画からギャグまで幅広い作風を描き分け、描き込みだらけの絵と凄いデフォルメが素晴らしく、大好きな作品ばかりです。


今回の「花も嵐も」はベトナム戦争終戦直後の連載で、オープニングが長々とページ数を使った『悲惨な戦争』の描写。
そして主人公の白鳥純也は報道カメラマンの父・湖彦をベトナム戦争で亡くしたため、アメリカ人へ恨みの感情を持つ高校生…という、重苦しい設定です。

都立極東高等学校の空手部でトップの実力を持つ純也は、アメリカンハイスクール空手部との対抗試合で相手を父を殺したアメリカ軍と重ねてしまい、全員をこっぴどく痛め付ける。
『こ……こいつらの仲間が…ベトナムにいたアメリカ兵が おれの父を殺したという現実に おれの理性はくるう!!
血をつぐなうのは 血あるのみ………と!!』

このアメリカ人達、体の大きさが日本人の10倍…いやコマによってはそれ以上のでかさで描かれています。

その仕返しのためにアメリカ側が本国から呼んだ男が全米ハイスクール空手チャンピオンのロバート・ジョナサン…百年に一人の天才児にして、髪型がかなりカッコいい。
さらに何という運命の悪戯でしょう。父親のカール・ジョナサン大尉はベトナムで住人らに残虐の限りを尽くした人物で、彼がある村の住人達を大虐殺した時に、居合わせた純也の父はその村人をかばうために犠牲になったのでした!

純也の父の仇であるカールもロバートにとっては元々は尊敬出来る男で、テキサス州にて親子で過ごした輝かしい日々は軍人として戦地に狩り出されてから終止符が打たれたのです。
その寂しさから、テキサスでも上映されて大評判だったブルース・リー主演の空手映画(…そう、ここではそう表記されていますが、当時のアメリカ人に空手と中国拳法の区別などなかったのでしょう)の影響もあってアジアの武道である空手を始めたロバート。
ここで川崎のぼる先生が描くブルース・リーの絵を見る事が出来るのは貴重!また、関係ないけど後で出てくるスケバンの流れ星お悠はヌンチャクの達人でした。

さて父親同士の暗い因縁も分かった純也VSロバートの宿命の対決ですが、空手の実力は圧倒的にロバートが上でやられてしまいます。
純也は平和な学園の空手ではロバートの強さに勝てるわけもないと悟り、その魔性の天才に対抗すべく学校を去り大山倍達の例に習って大菩薩峠で山篭りの特訓にはげむのです。
髪の毛はボウボウに伸び、山男だとシャバの人間に恐れられる風貌になった頃、純也は登山者が持っていた新聞からある事実を知り下山します。

あの戦地で人間愛から命を捨ててまでベトナムの村人達の盾になった純也の父でしたが…その死は無駄でなく、おかげで一人だけ助かった少女がいたと知り、またその美しい少女・ラーナが命の恩人の国である日本に来る事を知って会いに行くのでした。
そして純也、ロバート、ラーナというベトナム戦争の傷に翻弄され、関わりあう事となった若者達三人の役者が出揃いました!

『人間愛憎の血がよびあうごとく ああこうして一堂に会した わかき日本アメリカベトナムの三つの青春像』
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純也はラーナに父の事を名乗り出る事はせずに全財産を差し出し、ラーナがベトナム孤児の施設を作る事業にも自分の時間全部をかけて協力します。
ロバートの方は自分の悪魔ぶりを徹底するためにも、ラーナに両親や村人達を殺したのは自分の父である事実を話す。しかしラーナはむしろ、ロバートが銃を突きつけられたピンチにも純也の父に助けられた時のように自らを盾にして守ってしまいます!
そんなラーナの聖女ぶりはキリスト教の話なんかもからめて表現されていきますが、これは梶原一騎先生が好んで描いてたものですね。
有名な所では「愛と誠」早乙女愛「斬殺者」ロザリアお吟「人間兇器」朝比奈薫子…まぁ他にもいっぱい『聖女』がいます。

『ベトナム孤児の家 ふるさと学園』を開いたラーナと手伝いの純也ですが、これが試練続きとなります。
孤児達はそれまでブタ小屋のような収容所をたらいまわしにされていたため、すっかりひねくれた子供になってしまっていて、また極度の飢餓状態が続いたために食い物に対する執着も凄く、皆の友達になればと純也が連れてきた犬のコロまで殺して喰おうとしちゃいます。
さらに汚い日本の大人達に週刊誌のゴシップ記事ネタにまでされた純也は耐えられなくなって学園を去ってしまいますが、キックボクサーとしてデビューしてその血ぞめの報酬を送金する事にしました。

そこへロバートもキックへ転向してデビューしてきたため、同じライト級でもあり必然的に宿命の対決があり…
その勝負の先には本場タイ国の不世出の王者ソムデム・ゴーランとの対決のチャンスも控えていて、膨大な賞金もかけられているのですが、そこに純也とロバートの最後の賭けがありました。
その二人の血まみれの姿に、『バカヤロー』という人間不信の言葉しか覚えようとしなかった孤児達は涙を流しながら『あ…り…が…と…う…』と、そう言うのでした。

表向きは人間愛をテーマにしながらも、日本とは直接関係ない上に暗いベトナム戦争の影が影響したのが当時あまり人気が出なかったのが手に取るように分かるラスト近くの迷走と急展開でしたが、随所に素晴らしい突っ込み所も満載で個人的な思い入れもあります。
偉大な梶原一騎川崎のぼるコンビ作品でもあるし、この「花も嵐も」が連載後の刊行当時から一度たりとも復刊されず、マニアの間でしか読まれていないのは勿体無いとしか思えませんね。


そして この………………
美しいバカヤローは口ずさむ

花も嵐もふみこえて ゆくが男の生きる道……



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  1. 2010/03/20(土) 23:14:42|
  2. 梶原一騎
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1
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コメント

素晴らしいマニアですね。

たまたま、「ありがとう」という言葉の出てくる漫画を考えていて、「花も嵐も」を思い出しました。
もちろん僕も単行本を持っています。
川崎のぼる先生の作品はほとんど持っていますが、あまりアニメ化もされず、巨人の星といなかっぺ大将が代表作、、みたいな世間の扱いは不満です。

イサムもムサシも素晴らしい作品なのに。
フットボール鷹はNHK FMでラジオドラマになりましたね。

熊本で先生はお元気なのでしょうか?
最近、先生が書き下ろしたとみられる広告ポスターを見ましたが、まだ描けるんですね。

あの画力、タッチを受け継いでいる漫画家がいないのが残念です。
  1. 2015/02/21(土) 03:24:25 |
  2. URL |
  3. 影山 篤 #-
  4. [ 編集]

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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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