大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

劇画(105) 小池一夫 10 川崎のぼる 4 「長男の時代」

せっかくだからもう一作、川崎のぼる作品で続けましょう。
前回が梶原一騎原作でしたので、今回はもう一人の漫画(劇画)原作の巨頭…特にことバイオレンス劇画でいえば日本一の功績を持つであろう小池一夫原作の「長男の時代」(集英社刊)です。
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掲載は1980年からのヤングジャンプで、単行本は全7巻。

なかなか意外に思われるコンビですが、川崎のぼる先生と小池一夫(雄)先生とは宮本武蔵を描いた名作「ムサシ」でもコンビを組んでいますね。

さて「長男の時代」
オープニングは雨の中、飲み屋街を美しい女子高生が傘をさして歩いていて…"トリスバー 苦悩"に入店。そこで刑事に注意されると、女子高生はバサ!と髪の毛、いやカツラを取り外して逞しい胸板を見せる。
つまりはオカマだったわけですが、いきなり強烈です。そのオカマの名はタキ(本名・瀧夫)。
彼がバーの二階に上がると、そこでひよこのオスとメスを選り分ける仕事をしている者に、とある殺しの依頼をする事から物語は始まります。

殺しを頼まれた、その男こそ"特A"と呼ばれる殺し屋・久能隼人。バーの名前である『苦悩』もその名字にかけているのでしょうね。
タキはかつて自分のイチモツをナイフで切り取って本物のオカマにしたスケバンのブラック・ローズ(本名・川波葉子)を殺して欲しいというのです。
一度は依頼を断った隼人でしたが、タキが長男で云々という家庭の事情を聞いて受け、しかし自分の手でやらせる事にするのです。
それから第一話目のタイトルにもなっている『回転式六連発弾倉振出引鉄連動手製拳銃』を作る事から始めるのですが、これが長ったらしい拳銃の名前と同じくくどいくらい製作図から工程まで、やたら詳しく説明しているのです。

『おれも長男だ 家族を養わなければならなかった殺し屋は おれにとって職業だ
大学中退のおれに他に家族を養っていく途なんか どこにもないッ
世の中には人を生かすための職業はくさるほどある
だとしたら殺す職業があってもいいだろう』

という理屈も述べる隼人は、やはりタキの自分に似た境遇の部分を理由に手を貸す事にしたのですね。

ついに完成した拳銃で、しかも仕掛けを利用してブラック・ローズ自身で暴発させる手口で復讐に成功しました!
その直後に"トリスバー 苦悩"は閉店していて、
『家族を大切にしろ こんな世の中で信じ合えるのは家族だけなんだ
長男なら耐えろ 夢を見ないのが長男なのだ』

という書置きを残してバーのママと隼人は共に姿を消した…

タイトルも「長男の時代」だし、よほど家族愛を描こうとした作品なのだと思うでしょう。
しかしすぐにテーマ性はどこかへ飛んで行き、普通のハードボイルドな殺し屋漫画になってしまいます!
そもそも長男である事の辛さを語っていた隼人は、役所勤めだった父親が自殺して病気の母と妹が二人と弟までいる家庭の長男だと説明しているシーンがありましたが、その養わなくてはならない家族など最終回まで探しても一度も出てこないし、明らかに存在しない事になってませんかね。

"トリスバー 苦悩"でママをしていた女、他にも"おでん 苦悩"という屋台やってたりもしますが、彼女だけが唯一出る家族というか、隼人の叔母なので親戚ではあります。
デブでブスながら頭脳は天才的に良く…性欲処理の相手も勤めています!当初の隼人は、まだこの叔母としか寝た事がない設定でもありました。
彼女は女性器から消音(サイレンサー)を出す等の凄い事をやり、殺しの依頼を受ける連絡係(ツナギ)。

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第一話で隼人に惚れたタキは、殺されてもいいから会いたいと命をかけた作戦で隼人を呼び出し、ついには家族の一員になりました。
殺し屋としての隼人は、ブラック・ローズの実家であるヤクザの川波組を皆殺しにし、超一流の殺し屋であるガラパゴスの狙撃手と対決、F1レーサーの奇妙な依頼、それらを経て…
世界最大の殺し屋組織"雨の腕(レインアーム)"の登場です。

彼らは隼人を組織に加えようとしますが、拒否する隼人。
諦めきれないレインアームはハモニカカウボーイという刺客を送り、何と順主役と思われた叔母とオカマのタキまで殺してしまいました!
特にタキは隼人に写真を見せるため、むごたらしく痛めつけ、犯されながら無残にも…
「巨人の星」「いなかっぺ大将」の国民的漫画家である川崎のぼる先生がここまで描いている事実を見るだけでも、読んでおくべきだと思います。もちろん絵の魅力も凄いですから。

強敵ハモニカカウボーイを倒した隼人は、しかしレインアーム入りします。それは復讐のため。
強大な組織とまともに闘っても勝ち目はありませんが、内部から崩壊させようと。
そして最初に格闘技の強さを見られた後、生活適応能力もテストするため金もパスポートの武器も無しでニューヨークのブロンクスに放り込まれるのです。
この「長男の時代」で描かれるに『黒人とプエルトリコ人の街』ブロンクスは、密売人とギャングと悪徳警官しかいないような街で…読者は一生行きたくないと思う事でしょう。

いきなり住宅の2階から大股開きで放尿してきた黒人娘・ブルースという協力者も得て見事に生き抜き、警察と取り引きしたブラック・モスレムまでを相手に戦って逆に狩り出していき…もうブロンクスを征服するんじゃないかという所でテストは終了。
しかし肉体関係になっていたブルースは撃たれて死んでしまいました。

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正式にレインアームの一員となった隼人は、新たにブッシュマスターのコードネームを持つ白人女性を連絡係(ツナギ)として渡されます。
本名ドミニク、18歳の処女で、全身にブッシュマスターが巻き付いてる刺青をされています。
隼人は彼女を一から仕込み、組織の命ずる殺しもこなして…ついにレインアームの秘密を見つけました。
こうしてあてがう女との間に子供を生ませて、その子を組織が養育して殺し屋に裏切らせないための人質にしているのです。
『殺し屋も子どもを人質にとられていては組織に対して手も足も出ない』ために一生忠誠を誓わせるという設定はムリがあるような気もしますが、とにかくその子ども達を育てている育児機関を突き止めて押えれば組織に勝てると計算し、ドミニクも『家族』に加えて協力させた上で立ち向かう。

謎だらけのレインアームですが、何と組織はアメリカの国家機関であり、となるとボスはアメリカ合衆国大統領である!といった驚きの秘密も突き止めた隼人。
裏切りはバレてしまいますが、揺れ猫のジョーを倒して組織の核心に近づいていくと同時に、妻と認めたドミニクを失ってまた一人になり…今度は組織に対してハッキリと宣戦を通告しました。

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最後のパートナーは組織にだまされ続けた元殺し屋の娘・キャサリン
頭脳作戦でついに組織の育児機関を突き止めて制圧、大幹部である嘲い犬のギャグニィを倒して殺し屋たちの名簿も手に入れた事にっよって、この戦いも終了。組織は殺し屋どもに離反され壊滅したと説明があるだけ…
あとは短編形式になって襲ってくる残党を殺したり、隼人の都合で潰した組織へ殺しを依頼していた者への仁義のためにと金にもならない仕事をこなしていきます。

レインアームのボスがアメリカ大統領でも殺すと言ってたのに、組織の壊滅があっさりしすぎてて後半は緊張感を失ってしまいましたね。
本当に大統領殺しが実現出来れば、もっとトンデモナイ作品として名を残したかと思うと残念ですが、セリフの随所にいつもの変すぎる理屈でねじふせる小池節が出まくりで面白い。
ちなみに最終7巻の巻末には、「DO IT スパイ」という読みきり作品も併録されています。こちらはどうでもいい内容ながら、スパイマニアでチビの少年が婦警に体を許されてむしゃぶりつく…そこの描写だけで十分に愛すべき作品です。


夢なんか見るなッ
現実だけを真っ直ぐ見つめるんだッ
そうすりゃあ不安や恐怖なんてものは薄らぐ
人間にとって一寸先のことは なにも見えやあしねえし わかりゃあしねえんだ
なんにもねえと同じなんだぜッ あるのはいまだけなんだッ
そんな先のことを夢に見たってしょうがあンめえッ



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  1. 2010/03/25(木) 03:45:14|
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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