大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

藤子不二雄(49) 「マボロシ変太夫」

今夜の藤子不二雄作品は、"藤子不二雄ランド"から…「マボロシ変太夫」(中央公論社刊)です。
FUZIKO-maboroshi-hendayu.jpg
週刊少年キング(少年画報社刊)誌上で1971年から翌年まで連載された作品で、単行本は全2巻。この絵はもちろん藤子不二雄A先生側の手によるものです。

この時期物凄かった赤塚不二夫先生に対抗し、藤子A先生自身も好んで描かれていたナンセンスギャグマンガ。強烈な作品ですよ。
シュールでヘンな世界観が玄人向けというか読者を選ぶとは思いますが、『ジャーン』『ギニヤー!』『ドビャキーッ!!』といったおなじみの描き文字や、藤子A先生独特のムード満載なので個人的には大好きな一作に入ります。

雲野一家…パパとママ、ワクオウカブの4人は、夏休みにパパの田舎へ向かう所から物語は始まります。
家族が車中で爆睡している中、パパも居眠り運転していると…いつの間にか迷ったあげくに到着した街は地図にも載っていない"マボロ市"
住人は今までの常識が通じない人達ばかりだし、それどころか知り合った鼻水をたらしの不思議な少年変太夫は、まぁタイトルで分かる通り彼が主人公なのですが、マボロシ・パラソルを使うとどこへでも瞬間移動出来るし、異常な大きさの口は何でも吸い込んでしまいます。
変太夫のペットの犬はトリ犬。耳を翼のようにパタパタ動かして空を飛べるのです。

はい、傘をもって不思議な力を使う主人公といえば藤子不二雄ファンの方ならアニメ化もされた「パラソルヘンべえ」をすぐに思い出しますね。そう、変太夫はヘンべえの原型です。
さらに顔は、「マボロシ変太夫」以前の作品ですが未単行本化のレア作品「狂人軍」に出る狂人軍のオーナー、ハットのオヤジそっくり。
トリ犬の方も、顔は違うけど設定的に同じくアニメ化もされた「ビリ犬」の原型でしょうね。
さらにこの、車から異世界に迷い込む設定は短編「不思議町怪奇通り」そのものだし、もっと言うなら他作品でも何度か使われているルネ・マグリットネタもまであります。
藤子不二雄A先生はネタの使い回しを平気でやる漫画家ですが、ファンはそれをコレがそんなに好きなんだな~、とか暖かい目で見ながら応援しているのです。

ともかくマボロ市に迷い込んだ雲野一家ですが、この街は決して抜け出す事の出来ない世界でした。
それは何という恐怖か…今までの人生で積み上げてきた仕事や人間関係やらがいろいろあるでしょうが、全てリセットされて新たにこの地に住むしかなくなるのです。
ただしこの街はお金の価値が東京の千倍あるという夢のような状況でして、つまり十円が一万円、雲野一家の持ち金は五万六千八百九十五円でしたので、一気に五千六百八十九万五千円を持つ千万長者になりました。
しかもマボロ市は東京のパラレルワールドのようになっていて雲野家そっくりの家も見つけたし、東京に残してきた和子ちゃんそっくりのヒロイン・カズコちゃんまで登場します。

元々東京でそんなにいい暮らししてたわけでなし、結局考えようによってはラッキーだったこの強制マボロ市生活が、短編の連作形式で描かれていくのです。
マボロ市における正義のスーパーヒーローであるカッコー仮面と、そのドラ息子ケッコー仮面。カズコちゃんの父親でヤバすぎるキチガイ画家のジャーニー画伯、ビックリ卵から生れた毛むくじゃらの変なガリ勉生物ケダラケ
彼らと関わりながら毎回巻き起こるドタバタ騒動がシュールで変すぎて良い味があったのですが、何と後半になって唐突に雲野一家らマボロ市のキャラがほとんど出なくなります!
というのも、連載中人気が出なかったための路線変更という大人の事情があったにせよ『変太夫一人旅シリーズ』なるものに突入し、変太夫が一人で旅先にて騒ぎを起こす形式になるんですね。

まぁそれも悪くなかったのですが…結局この路線でも人気は出なかったのが力作のわりに単行本は全2巻という結果になったのです。
それにしても「マボロシ変太夫」最後を締め括る最終話。これが凄いバッドエンドなんですよ。
一人旅を続けて淋しくなった変太夫が、マボロシ・パラソルで子どもを欲しがってるママのいる家に行くと感動の一晩から親子の縁を結ぶ事となり、貯金して変太夫を育てる決意をする夫婦二人と親孝行を誓う変太夫…でしたが、何とその家のパパが怖ろしい酒乱!酔って帰ってきて変太夫やママに暴力を振るうと、変太夫はママの制止も聞かずに泣きながらまた旅に出るのです。

うーん…いきなりラストで辛く狐につつまれたような気分になるのですが、確かに元々が夢の中のような奇妙な感覚が残るエピソードも多かったし、これも狙って出した効果なのでしょうか。
後半に出てこなくなった雲野一家も、マボロ市での出来事は冒頭の居眠り運転で一家全滅して、死の淵で見た夢なのだと思うんですよね。街の名前がそのままマボロ市(幻)。そうに決まってます。


ワガハイは子どもを ひとり旅に行かせることに賛成するダラケ!
なぜならば ひとり旅は子どもに自主性と冒険的開拓精神をうえつけるからであるダラケ!



スポンサーサイト
  1. 2010/05/31(月) 23:24:58|
  2. 藤子不二雄
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<藤子不二雄(50) 「シスコン王子」 | ホーム | 藤子不二雄(48) 「大長編ドラえもん Vol.24 のび太のワンニャン時空伝」>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://mangabruce.blog107.fc2.com/tb.php/909-e6242f69
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

BRUCE

Author:BRUCE
BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する