大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

手塚治虫(15) 「手塚治虫 THE BEST 4 ミューズとドン」

かなり間が空いてしまいましたが、久々に例の『手塚治虫 THE BEST』シリーズの続きといきましょう。4巻目は「ミューズとドン」(集英社刊)です。
TEZUKA-the-best4.jpg

1998年から約4年で4期に分けて毎月刊行されたジャンプコミックス全20巻、『漫画はここから始まった。』のTHE BESTシリーズ…全然一般的なBESTじゃない通好みなセレクトです。
今まで紹介してきたシリーズ作品もわりとそうですが、手塚治虫先生の名前は知っていてもこの「ミューズとドン」を知ってる読者がどれだけいるのでしょうか。
これは集英社が企画したBESTですのでジャンプ系で発表された作品が多くなっているためでしょうが、実は手塚治虫先生、ジャンプでは数多く描いてきたものの後世に名を残す代表作とされている作品は生まれなかったのです…

このシリーズは帯に現在(といっても約10年前)のジャンプを盛り上げる人気漫画家が推薦文を書いているのも楽しみでした。とはいえ次の5巻までで終わってしまうのですが。
今回の4巻では、「HARELUYAII BØY」「無頼男 -ブレーメン-」「カウンタック」等の梅澤春人先生!
『妖獣ミューズというメス豹が色っぽい! 今街で豹柄の服着てるオネーチャン達より美しい!! このドラマは今も生きている。』
ですって。

各巻に別々のテーマ性もあるのですが、4巻は宇宙や異星人にまつわる物が登場するSF、といった所でしょうか。
収録された3作は全て週刊少年ジャンプに掲載された物で、「ミューズとドン」「荒野の七ひき」が1972年、「安達が原」が1971年の発表です。

実はこの3作…掲載当初は「ライオンブックス」の名を冠して1971年から1973年まで読切シリーズ連載していた物ですが、そもそも「ライオンブックス」シリーズといえばジャンプの前身雑誌ともいえる集英社のおもしろブックの付録として、何と1956年から1957年まで出版していた作品。
それを10数年後に再び、かつての同シリーズ編集者による強い要望を受けて掲載する事となったのです。そんなわけで70年代の方は「新・ライオンブックス」シリーズとか呼ばれて計15編のレベル高い作品が生まれています。
THE BESTシリーズでは「ライオンブックス」の名を取って別個の短編として扱ってますが、元々主人公もジャンルも時代設定も関連性が無いシリーズでしたので問題無いでしょう。とにかく再単行本化されたのが喜ばしい限りです。


個別に見てみると、まず「ミューズとドン」
オープニングは、ナイル沿岸南部の開発中だったダム建設現場のナイル川ほとりで神殿の遺跡が発見される所から。
その遺跡は紀元前三千年ほど古代のアゾスス神殿であり、発見後六百人もの作業員が殺されて呪われていると噂されるのですが…作業員達を殺しているのは妖獣ミューズと呼ばれるメスのヒョウ!
ミューズには不思議な五つの超能力がある事が判明していますが、ダム工事をしなくてはならない人間側は勇敢で強い犬三匹と飼い主達を選んで、ミューズ狩りに乗り出すのです。

選ばれたのは日本の少年永野正(タダス)とエジプト生まれの愛犬ドン、臆病な人と洋犬のオマール、そしてマサイ族と思われる黒人…その名もマサイと愛犬シーザー
それから廃虚で死闘が展開されるのですが、ミューズの動物ばなれした頭の良さによる罠でオマールとシーザーは次々殺されて無残な姿に…

ドンも一度はやられますが、ミューズは彼を気に入って仲間にしようとしたためにドンに裏をかかれてある秘密を知るのです。
その秘密とは、簡単に言えば大昔に地球へやってきた地球外生命体の残した『くすり』によってミューズは先祖代々役割りを与えられ、魔力を得たという事。それからドンとミューズの一騎打ちと、ミューズの断末魔に生まれた奇妙な友情、そしてタダスとマサイが現れる…といった話。


次の「荒野の七ひき」はもっとストレートな宇宙人もので、宇宙人を探し出して一匹でも多く殺すための組織だという汎地球防衛警察連盟(PEGPP)の決死隊員である、日本人の味島が車の事故のため積んでいた宇宙人捕虜と共に本部まで歩いて20日の砂漠を行く…
そこで初めて狩りの対象だった宇宙人達と話し、地球人よりはるかに強い自分の身を捨てて(身体をちぎって焼いて相手に食わせる、等)までの思いやり心を持っている事も分かり、ついには潮が地球人の真心を示すまでいくのです。
異形の宇宙人達をたくさん観れるのも嬉しい、ヒューマニズム作品でした。
一応七人での行動になるからこのタイトルだと思うのですが、残念ながらジョン・スタージェスによる名作映画「荒野の七人」(もちろん黒澤明監督の「七人の侍」リメイク)とは無関係です。


最後の「安達が原」は、「新・ライオンブックス」シリーズの一作目となった作品で、「黒塚(安達ヶ原の鬼婆伝説)」を下敷きにしたSF作品。
舞台は宇宙のはるか遠い星。そこに乗り込んだ宇宙調査官の殺し屋ユーケイが、宇宙船をおびきよせては乗組員を喰っていたという魔女を始末しに行く話なのですが…この魔女とユーケイにまつわる、あまりにも悲しい過去があったのです。
とある手料理をユーケイが食べるラストは泣けます。これは手塚治虫先生の知られざる名作ですが、一応アニメ化もされています。


女は待ちつづけたのじゃ
ときには政府から つかわされたイヌどもが この星へもたちよった
女はそいつらを殺し食らったのじゃ!!生きながらえるために!
そして 恋人はやって来た
昔のままの姿で いいや権力のイヌになりはてた姿で!!



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  1. 2010/06/12(土) 23:07:19|
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

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