大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

手塚治虫(16) 「手塚治虫 THE BEST 5 百物語」

『手塚治虫 THE BEST』シリーズの続きといたしまして…5巻目は「百物語」(集英社刊)です。
TEZUKA-the-best5.jpg
1971年の週刊少年ジャンプにて四回に渡って四部編成で掲載された作品で、短編集で続いてきたこのシリーズでは初の全1巻モノ。
元々は前回「ミューズとドン」の所で説明した、ジャンプの「ライオンブックス」(新)シリーズの一エピソード(5~8話目)として描かれた作品です。

今回の帯文は、「幽☆遊☆白書」「HUNTER×HUNTER」等の冨樫義博先生!
『昔、読んで泣いた記憶に残った話だった。 頭の中で勝手に自分の絵に変え、いつか読もうと思ってた。そうか、手塚先生の漫画だったんだ。』
ですって。
手塚治虫作品に対してジャンプの人気漫画家が一言書く、この帯文企画は素晴らしい試みだったのですが…この5巻で最後。次からは普通に出版社が書いた宣伝文らしき物になります。

さて「百物語」ですが、このタイトルだと『怪談話を100話語り終えると本物の怪が現れる』あの伝統的な怪談会を思い出すでしょうし、そうでなくても短い怪談が目まぐるしく続くイメージを持たれるかもしれません。
しかし実際は1話の中篇で、手塚治虫が愛し、何度も作品のモチーフに使っているドイツのゲーテによる長編戯曲「ファウスト」を日本の戦国時代版にリメイクしたような作品。
もちろん作者独自のオリジナリティ満載で、このTHE BESTシリーズ以前にも発表された1971年に単独でもジャンプコミックス化されている名作で、手塚治虫作品全体を見渡してもジャンプで描いた中では最も知られているのではないでしょうか。
このずっと以前に描かれていた「ファウスト」、また逝去により未完の遺作となった「ネオファウスト」などとも重なる部分が見られる、手塚史においても重要な作品。

いきなりお家騒動のトバッチリを受けて切腹を命じられた情けない顔の一塁半里(いちるいはんり)が主人公。
そこで死にたくないとあがく彼の前に、可愛い顔した女の悪魔・スダマが現れて、三つの願いと引き換えにタマシイを買うと申し出るのです。
もちろんどうせ殺される命…一塁半里は
『新しい人生を送りたい』
『天下一の美女を手にいれたい』
『一国一城の主になりたい』

という、まぁ普通の人間がすぐに思い浮かぶような願い事と共に契約を交わし、悪魔に魂を売ったのです。

新しい人生を送るために薬を飲んで風貌は美男子な別人になり、名前も不破臼人(ふわうすと)と変えます。もちろんファウストをもじった名前ですが、手塚作品はいつも単純ながら上手いネームセンスで良いですね。
それから三つの願いをかなえるまで悪魔であるスダマと共に行動し、自分の娘の真砂にひと目会いに行ったら惚れられたために男と斬りあいするはめになったり、玉藻前という怖ろしい妖狐の美しさだけにだまされて世の中の霊や物の怪がワンサと集まる恐山に会いに行ってヒドイ目に合ったり…

そんな命掛けの冒険をするうちに自分の力にも目覚めて、不破臼人はスダマと絆を深めていきます。
スダマは三百九十歳という事ですが、少女のようにベソかいたり微笑んだりして
『あたし……ご主人さまにメタメタにポーなの』
なんて言っちゃって、可愛いのです!

それから紆余曲折を経て不破臼人は確かに一国の主となります。
さらに『天下一の美女はしくじったわ…』というスダマに対して、『天下一の美女は目の前にいるよ』とスダマを愛す道を選ぶ…「ファウスト」も随分ロマンチックなラブストーリーになりましたが、しかし満足して三つの願いがかなうという事は、悪魔との契約に基づき魂を差し出す事になります。
またオープニングのように切腹場面に戻る事態となりましたが、それでも不破臼人は満足して死ぬ事を選び、その魂は…!?

ここで考えさせられるのは、人の幸せとは何なのか…『三つの願い』をかなえれば人は満足で魂を売り払っても良いのか…
生きる上で重要なのに忘れがちな難しい命題をいくつか提示されたような気がしますが、まぁ難しい事を考えなくてもアクション有りラブストーリー有りの娯楽物語としても楽しめます。
一生のうちに何度かは読む必要のある作品でしょう。


見てろ!!おれは自力でうでをみがく
おれのちからで 剣と戦術を身につけてやるっ
この顔にふさわしい 男の中の男に!!



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  1. 2010/06/20(日) 23:11:44|
  2. 手塚治虫
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

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