大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

手塚治虫(17) 「手塚治虫 THE BEST 6 ガラスの脳」

今夜も『手塚治虫 THE BEST』シリーズの続きで、6巻目は「ガラスの脳」(集英社刊)です。
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今回は5編を収録した短編集で、順に掲載誌と発表年を見てみると、
「ガラスの脳」・・・・週刊少年サンデー、1971年。
「グロテスクへの招待」・・・・月刊少年ジャンプ、1981年。
「ふたりでリンゲル・ロックを」・・・・月刊少年ジャンプ、1982年。
「るんは風の中」・・・・月刊少年ジャンプ、1979年。
「0次元の丘」・・・・週刊少年サンデー、1969年。
となっていて、掲載誌もですが発表年に十数年もの幅があります。

それでもこのシリーズで収録される短編は、巻それぞれに共通するテーマで選んでいたと思うのですが…
どうも6巻は良く分かりません。異形の物に対する恋愛モノか、とか他にもいくつか考えられるのですが一つは当てはまらなかったり。生命の神秘、だとか奇想SF、とかかな。


まず表題作の「ガラスの脳」は、列車事故に遭遇した臨月の妊婦から奇跡的に生まれた赤ん坊の由美が主人公。しかし彼女は、生まれた時からずっと昏睡状態なのです…
眠ったまま成長していく由美が十歳を越えた頃、同病院に入院していた同い年くらいの長沢雄一という少年が由美を発見し、絵本の『眠り姫』のようにキスで目を覚めさせようとする。
そんな話なのですが、凄いのがこの雄一。それから日課のようにキスをして、退院しても日曜ごとに通ってはキスを繰り返して、それが何年も続くのです!
身動きできない少女に毎日キス…しかも何年もって、いくら少年でも偏執で変質すぎてヤバイ。

体だけは健康に成長していく由美が十七歳を迎えたある嵐の夜、雷と共に由美は目を覚ますのです。(このシチュエーションだと、フランケンシュタインの怪物が動き出す時のイメージなのでしょうか)
目覚めて一日目は心は赤ん坊のようだったのに、二日目には小学二年生の知能まで追いつき…2時間に1年分の知識を吸収して十七年間のブランクを取戻していく由美!
三日目には精神年齢が肉体に追いついちゃうのですが、そんな不自然な存在は神さまが許さないのか、五日しか起きていられないと『誰か』に言われて知っています。
そして『誰かを愛したいの』という由美は好きな人もいると告白するのですが、それは残念ながら雄一ではなく、院長先生。
しかし当の院長先生は、実は由美の意識がないのをいいことに……いたずらをしていた変態医師だった事が判明!

雄一は院長を殴り、由美は自殺しようと胎児の頃に事故った列車へ飛び込みますがギリギリで雄一が助け、二人は大急ぎで結婚して、という怒涛の展開からついに運命の五日目を迎えます。
神さまだか何だかの宇宙の大きな力によって、また…死ぬまで続く深い眠りに落ちるのでした。
二度と目を覚まさない由美と、雄一は子供の時と同じような偏執さで家庭生活を続け、六十二歳で死ぬまで共に暮らすのでした。雄一が希望して解剖にふされた由美の脳は……。

"真っ直ぐ"で"永遠"な愛を描いた作品ですが、どこか恐ろしい人間(雄一、由美共に)の思い込みも感じる作品。
これを10年前に中田秀夫監督が代表作となった「リング」のすぐ後に映画化したというニュースを聞いた時、恐ろしいサイコホラーとして作ってくれたかと期待したのですが、どうやら原作「ガラスの脳」をロマンチックな純愛という部分だけを解釈して作っちゃったようで…観に行けませんでした。

続いてどんどんいきましょう。
「グロテスクへの招待」は、短いページ数で雄作ネリの重要な幼年期から少年期が終わるまでを描いてます。
こんなタイトルですがグロテスクなホラーではなく、むしろ恋愛要素を持ったロマンチックでノスタルジックな奇想物語。

「ふたりでリンゲル・ロックを」は、これも未来のSFな恋愛モノと言えますが、"1989年の未来"のコンピューター社会描写がちょっとおかしい。
世界で始めての宇宙人の誕生までを描くのですが、まぁこれはイマイチ。

次の「るんは風の中」は好きな作品で、友達のいない学生であるアキラが暗い日々の中、高架下に貼ってあるポスターの少女に惚れて、るんと名付けた彼女と饒舌な会話を楽しむ…また妄想系の話。
ポスターのモデル…つまり本物のるんと会うエピソードやラストも、悲しいながらのハッピーエンドが良いのです。
手塚治虫先生お得意のスターシステムで、あの名作「ミクロイドS」などに出ていたノラキュラが登場してくるのも嬉しい。

最後の「0次元の丘」は、輪廻転生をテーマにした不思議なお話…でした。


だって あたしはただの思い出だけなんですもの
そうよ思い出の記録にすぎないのよ
だからとまったまま……
未来はないの



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  1. 2010/06/22(火) 23:15:41|
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

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