大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

手塚治虫(18) 「手塚治虫 THE BEST 7・8・9 フライング・ベン」

続いては「手塚治虫 THE BEST 7・8・9 フライング・ベン」(集英社刊)です。
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集英社が1959年から10年間発行していた月刊少年漫画誌、少年ブックで1966年から翌年まで連載された作品で、『手塚治虫 THE BEST』シリーズでは最長となる全3巻の長編。
短い雑誌の歴史の中でいくつか長編を描いているためか、少年ブックといえば手塚治虫先生、というイメージがありますね。
また「フライング・ベン」手塚治虫先生にとってもヒット作を量産していた良い時期にあたりますし、犬漫画好きとしても外せません!

国境の山小屋に一人で住み、国境越えを望む人の運び屋をしている矢野正(タダシ)には頼りになる愛犬のベンがいますが、その弟犬にあたるウルが彼らの行動を阻み、客の3割を噛み殺している。
彼らの目的は何なのか…という序章から、長い過去の話にさかのぼります。

タダシの父親・矢野徹がローマのとある地下洞で"グッドナイト"という国際秘密結社の追手に殺されるのですが、殺される前に偶然会った雌犬に手帖を渡し、それを日本の家族へ届けるようにと託しました。犬にそこまで難易度の高い願いをして、でもそれを叶えてもらえるのです!
というのも、その時雌犬には三匹の小犬がいて、三匹は偶然見つけた古代の霊水を毎日なめて育ったために身体能力、頭脳共に超犬となって成長したから。母犬と死に別れた三匹は矢野徹の遺言通り日本まで辿り着き、ついには息子のタダシと出会います。
この三匹こそが冒頭に出てきたベンとウル、そして妹犬のプチ。名前はタダシが適当に付けました。凄い能力を持ったこの三匹のミュータント犬は生涯タダシにつくす事を誓い、物語の中心となっていくのです。

父が残した手帳には中近東の砂漠に埋もれた財宝の在処が描いてあり、そのためタダシの母親も殺され、"グッドナイト"に追われ続ける事となります。
また三匹の犬達も性格が全然違っていて、正義の味方然とした性格のベン、目的のためには手段を選ばないウル、優しく奉仕の気持ちが強いプチ。
ウルはその性格のためベンと対立する事となり、兄弟で何度も果し合いをし、タダシにも捨てられていますが一方的な愛を捧げます。やり方は違っても二匹共、生涯タダシにつくす気持ちは忘れていないのが泣けるのです。
ウルが銀行強盗したりギャンブルの八百長で稼いだり(犬なのに!)したのも、タダシが何度も金が欲しいと叫んだからだし…
プチの方は自らの能力を生かしてサーカスに身売りして、タダシに大金をもたらしますが、花形スターとなりながらも後に不幸な結末を迎えます。

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ベンとウル。前者は政府の特殊機関で諜報部員…つまりは007みたいな『00犬』として活躍するようになり、後者はカルロスという犬を愛する"グッドナイト"の一員に手なずけられてと、ますます対立は激化。それでも二匹は時に相手の命を助けたり、複雑な兄弟です。

タダシは最初から人間で唯一の味方になってくれた私立探偵の伴俊作らと、ついに父親の残した地図を頼りにシルクロードへの冒険に旅立ちますが、行く手を阻むあの組織!
"グッドナイト"の正体もだんだん分かってきますが、ボスはダーク・グレー大首領という独眼流の男。他も魅力的な敵達にあふれる組織でした。
おっと伴俊作とはもちろん手塚治虫式スター・システムを代表する俳優、通称ヒゲオヤジと呼ばれるあの男ですよ。「ジャングル大帝」「鉄腕アトム」「バンパイヤ」「ブッダ」…数多くの代表作を持ち、手塚キャラ一の古顔ですね。

ベンの活躍で"グッドナイト"は壊滅しますが、あれ?見つけた財宝はどうなったのか、そんな事はどうでもいいからか描写がありません。
だって最終対決はこちら…共にタダシを愛すベンとウル!やはりどちらかが死ぬまで、闘うしかない運命なのです。
どちらかといえば悪役に描かれたウルは、最後まで殺人を繰り返しますが、これも妹のプチの敵討ちとして人間達をキバで噛み砕く決心をしたわけだし、『犬のほこり』があるから人間のいいなりにはならず、ウルトラ犬ともてはやされるベンを笑い飛ばすカッコいい奴。

何度も強敵を倒してきた正義のベンですが、実はでかい敵を倒す時は残酷!
プチを襲ったライオンの時は自ら口の中に突っ込んで首を切り取って血まみれで出てきたし、"グッドナイト"の化物犬タフが相手の時は同じやり方で口から体を引き裂いてしまいました。

さてプチの墓の上で行われた最後の闘い。それから感動のエンディングまで、見事!
ベンとウルの運命の分かれ方、敵対関係になりながらも奇妙な友情というか兄弟愛があり…気を揉みながら一気に読んでしまう事でしょう。
あえていうと一本気な犬達より、人間の主人公であるタダシの性格の方がイマイチでした。あれ、と思う行動がありましたが、これは人間だから悩み揺れる事もあるという事でしょうか。


なあベン プチはここにひとりぼっちで さびしいだろうなあ……
おまえか おれか どっちか一ぴきがつきそってやればよろこぶぜ……きっと……
なあにね……プチとならんで この土の下にはいるにゃ……
どっちかが死ななきゃならないということさ!



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  1. 2010/06/25(金) 23:17:06|
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

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