大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

週刊少年ジャンプ(52) 春日井恵一 1 「アカテン教師梨本小鉄」

今夜は春日井恵一先生の「アカテン教師梨本小鉄」(集英社刊)。
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前回に続いて、私が子供の頃にリアルタイムで読んでた1980年代の週刊少年ジャンプ連載作品で、単行本は全4巻です。

作者の春日井恵一先生は1960年生まれの岡山県出身で、以前に流星之介名義でデビューしています。世間的にはこの梨本小鉄だけの一発屋イメージが強いのではないでしょうか。いやそもそも今作すら知らない人が多いかも…
この後もジャンプで短編をいくつか描いてたのを読んだ覚えはあるのですが、そのうち同誌では新作が出てこなくなってしまいました。どこか他で活躍していると良いのですが。

「アカテン教師梨本小鉄」自体は1985年にジャンプの増刊号にて読み切り作品として掲載され、それが好評だったために1986年から翌年まで週刊少年ジャンプ本誌で連載されました。
3回分ある読み切り版の方も、単行本1~3巻の巻末に収録されているので読めますよ。

オープニングとエンディング共に、また作中にも何度も吉田拓郎の歌詞が使われているので作者の拓郎好きは十分に分かりましたが、肝心の作品主人公はタイトルでお分かりの通り梨本小鉄
『なしもとこてつ』と読むこの男が、備前色羽市にある母校の"小春日和中学校"に代用教員として赴任してくる所から物語が始まります。

そう、小鉄は教師。
古くから世に学園漫画はあふれているので、『教師が主役の漫画』というのも一ジャンルとして扱って良いくらい多いですね。
数々の巨匠も扱っているテーマですが、手塚治虫「どろんこ先生」石森章太郎「千の目先生」等。
ホラー漫画家だと日野日出志「ぼくらの先生」好美のぼる「亡霊先生」楳図かずお「ミイラ先生」等。ちょっとエッチなのは上村純子「いけない!ルナ先生」(「あぶない!ルナ先生」)、えびはら武司「まいっちんぐマチコ先生」
他にも望月あきら「ゆうひが丘の総理大臣」江川達也「BE FREE」えんどコイチ「ついでにとんちんかん」(「ミラクルとんちんかん」)、森田まさのり「ROOKIES」・・・時代もいろいろにまだまだあるので、このジャンルの奥の広さを分かってもらえるでしょう。

「アカテン教師梨本小鉄」と同じ『(不良)教師が主役の漫画』だけでも牛次郎原作、地引かずや「唐獅子教師」水穂しゅうし「はいすくーる仁義」守山鶴「ファンキーモンキーティーチャー」藤沢とおる「GTO」等とヒット作が多いのですが、梨本小鉄はそれらに決して負けない、見所満載の面白さを持っています!

主人公である教師・小鉄はギャンブルで『常勝無敗』の強運と実力の持ち主であり、初めての授業に出れば運試しと称して生徒にこずかいを賭けさせて、博打についての確率問題を出題するのだから型破りすぎます。しかし、そんな指導法の彼に生徒達が慕ってついていく…
常にオールバックの髪に被るニット帽、そして半袖コートで貫くファッションもカッコよく見えてきました。

話が進むにつれて小鉄の過去なども分かってくるのですが、3歳にして少年雀鬼と呼ばれてTV番組内でプロの麻雀を相手に九蓮宝燈(役満です)で上がっていたとか、そのまま感性の強い子供時代を博打の中で育つと『鼻息で人の心が読める』までになり競馬の予想屋をやっていた13歳の時には人の命を救ったり…
強運の秘密の一つには、明大寺で毎年行なわれる裸祭りにて数千人もの群集が奪い合う陰陽二本の宝木をかつて3年連続獲得していて、天照大神の時代から開運の霊験あらたかなその宝木6枚の御利益を永遠に保つ為に瞬間接着剤で背中に貼り付けている事もあるようです。
そして代用ながら教師になった今は26歳。最低クラスと呼ばれた3年A組を受け持ちましたが、馬の心まで読む小鉄の鼻を生かした予想問題と、博打で培った"通し"のテクニックを生かしたカンニングで、他の教師からの妨害もはねのけて学年トップに仕立て上げました!

それから生徒の誰か一人が準主役になっての短編連作で、人情モノの話が続きます。
高橋初音の家に家庭訪問に行った時は、高橋家が経営している"PUB ナチュラル"という店の名前を見て内心
『ケッ…ナチュラルか!! どうせ気取ったジャズの店かなんかだろ…!?』
なんて思いながら店に入ると、店名の由来はかつてのTVヒーロー「ナチュラル・キッド」からの物で、しかも初音の父がナチュラル・キッドを演じた俳優だと分かり、憧れの彼のために一肌脱いで金貸しと勝負します。それが便器に万札を流して詰まらせた方が勝ちという勿体無いルール。
ここで見せる小鉄の対"成金"用の秘策が凄いのです。この勝負が子供心に印象深くて、確かめるため後に「アカテン教師梨本小鉄」の単行本を探した次第。大人になって読み返したら他の話も全部覚えてましたが、これは小学生には早すぎたというか、ちょっと内容アレンジすれば青年誌で人気出そうな話ばかりなんですよね…
ちなみに「ナチュラル・キッド」の元ネタである「ナショナルキッド」は、作者の生まれた年に放送された番組でした。

高橋初音は次の話『ド演歌人生編』でも準主役で出てくるのですが、感動度ではこの話が一番だと思います。
あのTV番組"のど自慢"に出る事になった生徒がいるため小鉄はクラスの皆を引き連れて会場に行くのですが、小鉄自身も飛び入りで歌ったのは「人間なんて」。もちろん吉田拓郎の歌ですね。
この番組で初音は大賞を取って演歌歌手への道を進む事になるのですが、その時落選した鳩山唱子がクラスのヒエラルキーでトップにいたために、初音はシカトを受ける事になり…話の締めくくりの雨のデパート屋上にて一人で歌う"プロ"になった初音の姿に涙が出てしまいます。

続いてラッコと呼ばれる登校拒否児の洋一を、
『いじめられっ子ってえのは "一人ぼっち"じゃねえ みんな"一匹狼"だ!!』
と力づけて、生徒会会長選挙で学校が推す政治家の息子と対立させる話も良かったですね。

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そして物語はジャンプ編集部の意向でか…何と当時のジャンプを引っ張っていた他の人気マンガのように、バトル漫画路線に切り替わっていくのです!
いや教師モノなのにバトル漫画なんて無理だろうと心配されるでしょうが、それがやれちゃうんですね。まずは大金持ちで金に物をいわせる貴王子紀代彦という教育界の貴公子と3年A組の担任争い。
続いてはもっと分かりやすく、"天下一予備校"主催の『全日本有能教師コンテスト』が開催されてしまうのです!もちろん当時の少年読者だった私はワクワクしながら楽しく読んでたんですけどね、今の目線で見るとこのバトル漫画路線で行くのは無理があったかと思います。

このコンテストに出場出来るのは日本で最もスゴ腕で通る教師達7人+1台で、そこに小鉄が選ばれちゃうんですね。
優勝賞金1000万円のこの教師コンテストは他の出場者も個性豊かで、小鉄と貴王子の他は
訥久広樹…訥久ヨットスクールのスパルタ教師。モロに戸塚ヨットスクールの戸塚宏校長がモデルなわけですが、風貌も似ているのが笑えます。余談ですが私は個人的に、連載中は逮捕されていた戸塚校長が唱える「脳幹論」にいろんな意味で興味があります!
桜門紋次郎…国家権力の爆発教師。元交通機動隊隊員の彼が持つトラウマとは!
楠見玲子…男女交際に厳しいフェミニスト教師。
無名方松造…通称無法松の彼は何と小鉄の博打の師匠だとか!
アビ・ナーシ・ヨンソン…ネパール出身の超能力者。『梵(ぼん)』と口に出せば身体は宙に浮くし、テレパシーで生徒にテストの答えを教えちゃいます。
そして、教育用コンピュータのジロー

大会ルールとしては教師それぞれに与えられた一クラスの成績で争われるはずだったのですが、小鉄は柔道の猛者・秋葉大作率いる手強いクラスの生徒達を制すると、次はライバル教師を1人1人落としていく作戦で攻めて行きます。
常勝無敗の小鉄としては最大のピンチもありましたが、ややあって大会に優勝し…一躍有名人となったが故に母校を去らねばならなくなるのです。

最後は可愛い教え子達と旅に出て『女 ジャンケン パチンコに弱え奴は この世の中渡っちゃ行けねえぜ!!』と、そしてまだ教えてなかった酒の飲み方まで伝授(中学生に)して、去って行きました。
梨本小鉄の口癖といえば『アホダマー!!』でしょうが、それを叫ぶ姿はもう見れなくなってしまった…他に楽しみが無い少年読者にとって好きな漫画が終わる事は何より悲しい事でした。
その時の気持ちなど思い出してしまいますが、だがしかし!何と連載終了から約10年後、同誌にてうすた京介先生の「セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん」で明らかに小鉄をモデルにした無し元小銀というキャラが登場するのですから、嬉しかったな~。


何が"神"だ "人助け"(ボランティア)だ!!
俺はいつも『天に向かって唾を吐き』続けてきた!!
てめえの力で勝ち取って来たぜ!!



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  1. 2010/09/05(日) 23:36:26|
  2. 週刊少年ジャンプ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

当時の連載作品の中では地味なイメージを受けていたこの作品ですが、何故か記憶に残って消えることがない・・・。

とは言っても全てのストーリーや設定を詳細に覚えているわけではありませんが、あるコマやセリフなどがふと脳裏をよぎる事があるんですよね。

確か天に唾を吐き続けていたらそのうち虹になった、とかいうエピソードがありましたよね?
あれがネパール人教師と対決する回でしたっけ。
「梵」とかつぶやいてる怪しい教師と生徒たちの姿は何故か鮮烈に覚えている・・・。

あと、演歌歌手の女の子の回の最後に、「井の中の蛙、井の中も知らず、か」とかいう主人公の決め台詞があった気がする。

当時小学生だったので(今もですが)、赤点って言葉の意味知りませんでした。
なんとなく、出来が悪いって意味だろうなあ、とは感じましたけど。
  1. 2010/09/08(水) 20:30:12 |
  2. URL |
  3. アヌッサー #-
  4. [ 編集]

アカテン…

>アヌッサーさん

そうそう。私も正にそんな印象で、だから好きな作品だったのに当時は単行本も買ってなかった。
で、大人になって読み返しても意外と話は全て覚えているもので、強烈な懐かしさに包まれましたよ。今度貸しましょうか?
そう、ネパール人のアビ先生との対決時に出てきたエピソードで、小鉄は小学生の頃から天に向かって唾を吐き続けていたら神様も呆れちまって、高校三年の秋に虹にする事が出来るようになった…というのがあります。私もマネしているのですが、未だに出来ません。
井の中の蛙…のセリフは、よく覚えてましたね~。別に決め台詞ではない小さなコマですよ。
で、最後にタイトルの『アカテン』という言葉の意味。本文で書こうと思って忘れてましたが、私も同じく知りませんでした。カタカナで書いてるのも良くないですよね。
ちなみに我が高円寺にはアカテン(赤天)という名の渋い餃子屋さんがあります。今度行って、梨本小鉄について語りませんか?
  1. 2010/09/08(水) 22:11:08 |
  2. URL |
  3. BRUCE #-
  4. [ 編集]

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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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