大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

週刊少年ジャンプ(54) 寺沢武一 2 「コブラ」 2

寺沢武一先生の名作「コブラ」(集英社刊)の続きです。
8巻でサラマンダーを倒して以降…1980年代初頭の週刊少年ジャンプなのに、特例で『描き溜めシステム』連載になった9巻からですね。絵がかなり洗練されてきてますよ。
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いつも葉巻をくわえ、しゃれたセリフを口にしながら左腕に仕込まれたサイコガンが発砲される…クールすぎる最強の海賊、不死身のコブラ

今度は豪華客船で宇宙遊泳を楽しんでいたコブラが、その船ごとジゴルという全長600kmにも及ぶ巨大な捕鯨船に宇宙船ごと飲み込まれ、その胃の中で同じく飲まれた人々によって作られた一つの国・スタマックスにて支配者である地獄の神、黒竜王と対決します。
黒竜王は人間の恐怖を食物にして生きている怖ろしい存在ですが、コブラは味方になった女司教に怖くないのかと聞かれて、
『こわいさあ だがオレはあぶない目にあえばあうほど 口もとがゆるんでくるんだ』
とカッコよく答えて、怖ろしいバケモノに立ち向かう。
この世の地獄を何度もくぐりぬけてきた恐れを知らぬ男・コブラですが、黒竜王によって生まれて初めて真の恐怖を覚えた時の記憶を再現されてしまいます。
あのコブラが嘔吐までしながらも何とか黒竜王は倒すのですが、重要なのは思い出させた恐怖の場面。角の生えた謎の男にコブラが左腕を切り落とされた時の記憶です。
現時点では何故左腕がサイコガンになっているのか分からないのですが、今後核心に迫っていく事となりそうです。

続いて「異次元レースの巻」です。
ある事情により異次元世界への侵入を可能にした大企業が企画した、他の宇宙、他の世界へと移動しながら行われるレースに参加する事になったコブラが、企業スパイのジェイソンの妨害によって異次元世界をさまよう事になり…
とにかく様々なシュールで怖ろしい世界を移動しながらジェイソンを追うのですが、この次元や時を超えて移動する二人の関係が羨ましくもある壮大な冒険。

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この後しばらくは中編がいくつか続きます。
記憶を失くしながらも闘いの中で甦らせる「黄金の扉の巻」、ついにサイコガンが壊れたため地球の日本へ向かい製作者の不知火鉄心が残した新しいサイコガンを取りに行く「神の瞳の巻」等、傑作エピソードばかりですよ。
特に後者は「コブラ」においては珍しいコブラ以外の地球人を、しかも日本を舞台に見れるなんて貴重な話です。ここではこのエピソードのヒロインである鉄心の娘・ゆう子(20歳)と共に平和な世界で生きる事を決意してサイコガンを捨ててしまうし。
もちろんコブラにそんな生活が許されるわけもなく、ゆう子はパピヨンの部下に殺されて、意志があるようなサイコガンに呼ばれると再び殺し合いの輪の中に戻るのでした。

『サイコガン…!きさまは血ぬられた死神だ オレの愛するものまでも奪うのか!!
 オレからなにもかも奪わなければ気がすまないのか
 きさまはオレにとりついて地獄の底まで ひきずり込む気かっ!!
 いいだろう 地獄の底までつきあってやるぞっ!!』


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「黄金の扉の巻」から出ていて、しばらく複数話にヒロイン扱いで登場する銀河パトロール隊員のシークレットを助けるため、コブラはナスカ星に行ってダイヤモンドの歯を持つ人面草・マンドラドの謎を解く…「マンドラドの巻」は、短編ながら人間の欲望の醜さをシュールな世界と共に描いた傑作。

続く「黄金とダイヤの巻」「さまよえる美女の伝説の巻」「カゲロウ山登りの巻」も共に同テーマで、やはり財宝と欲望を描いているのですが、推理モノの要素もある良く出来た話ばかり。
「さまよえる美女の伝説の巻」で海の底を美女の亡霊達が歩き回る姿は、江戸川乱歩の小説を思わす病的で幻想的な美しさを持っていますね。

そして「六人の勇士の巻」「その名はミスティーの巻」「闇と光の対決の巻」まで、連続した長編が続きます。
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巨大な犯罪組織・海賊ギルドからは様々な敵が出てきましたが、「コブラ」全編を通しても最大の宿敵はプロの殺し屋クリスタル・ボーイでしょう。
第1巻から何度か登場していた彼は、サイコガンによる攻撃をも屈折させて通じない特殊偏光ガラスの肉体を持ち、骨格が透けて見えるいかれたデザインのサイボーグですが、暗黒の邪神アーリマンに魂を売ってパワーアップして帰ってきました!
しかもクリスタル・ボーイは海賊ギルドをまとめあげ、内部の反対も力で押し切ると全宇宙に向けて全面戦争と征服を宣言します。

伝説によれば、かつて世界は善なる光明神アフラ・マズダと暗黒の邪神アーリマンが同等の力を持ち、善と悪と同等の力で支配していたそうです。
さすがに今度ばかりはピンチのコブラはフラ・マズダの力を借りて、味方となる『六人の勇士』を探し出します。
以前のエピソードでもコブラが仲間を引き連れる事はありましたが、今回の勇士たちもまた個性的で良いです。ちゃんと戦う理由もあり、それぞれ特殊能力を持っているし。
六人のうち一人はもちろんコブラで、他はゴクウホークミスティードブスン…そして最後の一人が意外にも現在火炎林の石中に囚われの身になっていた、全編通してのコブラの相棒にして女性型アーマロイドのレディでした!

ついでにこの話で、レディのスリーサイズがバスト88cm、ウエスト60cm、ヒップ89cmという事も判明します。
フリッツ・ラング監督の超名作サイレント映画「メトロポリス」(Metropolis)に登場するアンドロイドのマリアがモデルと思われますが、アーマロイドにしてこのセクシーさ!落ち着いた性格描写といい知力といい、寺沢武一先生の理想の女性は人間キャラではなくレディなんだと思います。
元は人間だったのですが、いかに生身の体を捨てたか…人間だった時の美しい姿や、他にもだんだんと分かってきますよ。

ちなみに私は『六人の勇士』のうち一人だった電気(エレキ)使いのミスティーの大ファン。ほとんどがセクシーな大人の魅力を持った女性を描く「コブラ」にあって、珍しいロリ系の女の子なんですね。それでも露出は多いし。
しかも電気使いのその能力は強力!ミスティーは電気と一緒に育ち、電気はただのエネルギーじゃなく知能を持った電気もいて、彼らと友達なんだそうです。

ついに必要な仲間も揃い、過去に重要な因縁があったことも判明したコブラVSクリスタル・ボーイ。
タネをばらせば、何とコブラが現在サイコガンを仕込んでいる左腕を失ったのは15年前…まだサイボーグになる前のクリスタル・ボーイによっての事だったのですね。
しかしコブラの反撃で殺されてサイボーグ化して蘇生し、またお互いがその記憶を消していたため、今まで思い出せなかったと。
ここへきていろんな事が判明したこの二人による宿命の対決はどうなるのか…

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そしてこの後の「地獄の十字軍の巻」「ブラック・ソード・ゼロの巻」と続くメチャクチャ面白いエピソードまでが週刊少年ジャンプで連載した、JC(ジャンプ・コミックス)の全18巻でした。
この話で甦ったブラック・ソード・ゼロというのが宇宙一強力な殺人マシーンで装甲戦闘ロボットの究極の作品と言われる男性型バトル・アーマロイド。
肉体がレディと同じ『生きた金属(ライブ・メタル)』製で、しかも生まれついての殺人兵器である彼は他の兵器や物質との融合能力すらあり、初めてサイコガンをよけてかわしちゃうし…もはや無敵すぎますが、さてコブラはいかに彼を倒すのか。

ついでに最終巻である18巻には、「リターンコブラの巻」という感動系の描き下ろし短編が収録されています。この続きがスーパージャンプコミックフラッパーと発表雑誌を移して描かれ、現時点では完結していないのが名作「コブラ」
生みの親である寺沢武一先生の重い病気の報を聞いた時は心から心配しましたが、いつかコブラの物語に『END』の文字をつけてくれるのでしょうか。

そうそう、前回この作品を紹介した時にアメコミの影響を受けていると書きましたが、正確には繊細な絵で描く日本の漫画にアメコミの技法を取り入れて発展させてまして、加えてストーリーの魅力もあり…いろんな面で本家を上回っていると思います。
画壇では世界に立遅れてる日本ですが、こと漫画では世界一だと思いますし、そんな中で寺沢武一先生のアート的なセンスは素晴らしく、代表作「コブラ」はもちろん日本が生んだ世界に誇る名作。
後世にはきっとミケランジェロピカソゴッホらの作品と同等以上に扱われるはずなので、絶対に読んでおいて欲しいものです。


この男はなに者なの……
この鋼鉄のような筋肉……
まるでわたしの体重などないかのように 風のように走りぬける

そしてかれの目…
やさしげなひとみの中に ときとしてキラメク つめたくきびしい殺人者の光
かれこそは…ひょっとしてわたしを…!!
わたしをこの のろわしい運命からすくえる男かも!!
この世でただひとり 黒竜王をたおすことができる人間かもしれない!!



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  1. 2010/09/26(日) 23:23:23|
  2. 週刊少年ジャンプ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:4
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コメント

カゲロウ山登り、マンドラド、その他諸々どれも未だに記憶に残り続けている傑作ばかりですね。

もちろんこの当時の他のジャンプ作品も楽しみにしてはいましたが、コブラの存在感は一風違った。
バリバリのアクション漫画然とした回ばかりではなく、漫画を読みながらもミステリー小説を読んでいるような趣のものも時折挟まれていました。

そういうお話の時の空気がまた陰鬱なんですよね・・・。勿論ストーリーを引き立てるために欠かせない、いい意味で、ですが。

カゲロウ山、マンドラドや「2人の軍曹」などもそうですが、訳の分からない状況で仲間が一人また一人と凄惨な死を遂げていく恐怖、そこから一気にカタルシスを感じさせるラストへ持っていく演出、確かに洋物の小説のようです。

最後は結局単なる力技で解決しちゃう近年のジャンプ漫画とは次元が違いますね。


そうそう、「神の瞳」を巡るパピヨンとの戦いで、最後に異次元から異次元へと移動しながらコブラがパピヨンを追い詰めるシーン、
あそこで「出口のない小屋とそこに住む一人の少女だけで構成されている宇宙」という異次元が出てくる・・・。
あのアイデアには小学生ながら度肝を抜かれ、今まで忘れたことはありません。

あとタイトルは忘れたのですが、例によってヘンな星に降り立ってしまったコブラ、しかしそこでは満月の光を浴びた生物は突然変異を起こし得体の知れぬ姿に変貌してしまう上に気が狂う、みたいな話がありましたよね。
あれもゾッとしたなあ。


ついでですけど一巻の通行人のセリフ、「わ~気違いだ~」は現在では改定されてるんでしょうかね。
  1. 2010/10/01(金) 00:09:27 |
  2. URL |
  3. アヌッサー #-
  4. [ 編集]

宇宙一速い「タートル」号

>アヌッサーさん

そうですね~、読者層が基本的に小学生であるこの時代のジャンプにあって、この完成度や作品の魅力はもう、別格だったでしょうね。
また「コブラ」は絵やキャラばかり目立って、ミステリー仕立てのストーリー展開についてはあまり語られる事が無いと思いますが…見事なんですよね。
コブラ自身が能天気に見えるキャラだからこそ、暗い話の方がバランス取れてる気もします。

件の「神の瞳の巻」で最後に異次元への入口だった少女の腹…うん、凄いアイデアでした。
コブラはあのさびしい少女への、『こんど遊びにくるときはプレゼントを山ほどかかえてくるぜ』という約束は果たしたのでしょうかね。
満月の光を浴びると突然変異を起こすのは、「異次元レースの巻」で出てきた流刑星のエピソードですね。シュールな星で、短いながらいい話でした。

一巻のそのセリフについては、今度復刻版で確認してみます。そういえば一巻では、まだ師匠(手塚治虫先生)の絵に影響受けたようなキャラも出てたんですよね…女サイボーグに殺されるだけの男とか、そっくり。
  1. 2010/10/04(月) 12:18:23 |
  2. URL |
  3. BRUCE #-
  4. [ 編集]

週間少年ジャンプ(54)寺沢武一2「コブラ」2

[色:990000]色付きの文字[/色v-10]おはようございます懐かしいですリアルタイム読者でしたよそれではさようなら日中って蒸し暑い
です
  1. 2012/09/24(月) 06:40:19 |
  2. URL |
  3. 名無しさん #lIIhmX1g
  4. [ 編集]

コブラ

>名無しさんさま

蒸し暑い時期はもうすぐ終わると思います。
コブラを読んで、残暑を吹き飛ばしましょう!
  1. 2012/09/24(月) 22:13:13 |
  2. URL |
  3. BRUCE #-
  4. [ 編集]

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Author:BRUCE
BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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