大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

劇画(107) 宮谷一彦 2 「スーパーバイキング 宮谷一彦自選集」

今夜は、物凄く久しぶりな宮谷一彦作品で、「スーパーバイキング 宮谷一彦自選集」(チクマ秀版社刊)です。
MIYAYA-super-biking.jpg
宮谷一彦先生については「ココ」「青春相続人」(青林堂刊)にだけ少し触れておりましたが、あの後で突如…2007年に刊行された単行本がこの「スーパーバイキング 宮谷一彦自選集」です。

宮谷一彦先生がもう漫画家としての表立った仕事はしてないとはいえ、あのATGで映画化までされた代表作の「人魚伝説」すら読めない!というどうしようもない出版業界の中で、この本を出したチクマ秀版社は偉い!
この本のせいだったのかは分かりませんが、出版後数ヶ月したら倒産しちゃいましたが…

ともかく「スーパーバイキング 宮谷一彦自選集」は著者の9年ぶりとなる単行本。新作を描いてる人ではないので過去作品を自選して収録した物ではありますが、表題作「スーパーバイキング」は単行本未収録だった作品で、しかもあの宮谷一彦先生が超メジャー誌であるヤングジャンプ(集英社刊)に連載した、もちろん唯一となった異色作。
その存在を噂でしか知らなかった私が飛びついたのは言うまでもありませんが、これがまた凄いんですよ。1960~70年代を象徴するような漫画家である宮谷先生が、軽くてポップな物がもてはやされた1980代初頭(82~83年)に描いた作品なので、時代や掲載誌に合わせて大衆に迎合した作風になってたらどうしようと心配はしていたのですが、それは全くの杞憂に終わりました。

主人公のタクは、冒頭からバイクキチガイの仲間達と共謀して零戦の星型十四気筒(七気筒 二列)エンジンのゼロなんてスーパーバイクを組み立てて走らせバカ騒ぎしてるような奴だったのですが、タクの住む市の暴走族を片っぱしから皆殺しにすべく刈っている"悪霊ライダー"の正体が、高校時代の自分にラグビーと熱い想いを教えてくれた輝かしい憧れのスーパースターたる先輩だった事を知り、追う事にするのです。
そして悪霊ライダーと"ひみこ"という巨大暴走族との抗争に巻き込まれてゆく…

ひみこが悪霊ライダー対策として援軍に雇った…昔は地獄のサーカスと呼ばれていたという関東の族の神様"皆殺し三兄弟"とか、大仰なキャラで盛り上げるのはヤンジャン連載だったためでしょうか。
映画「マッドマックス」ばりの派手な戦争をこの画力で描いてるので、バトル漫画要素の多い『暴走族モノ』としても面白いのですが、この緻密な描き込みの絵や構図、質感、ストーリー展開…随所に宮谷一彦節を見つけては微笑ましくなるのです。

今作ではバイクの迫力を出すのに力を入れていると思いますが、そのマシーンの説明が丁寧で、
『ハーレーダビッドソン FLH80 1300CC 空冷式 V型2気筒 約70馬力』
『カワサキ Z750FX 746CC 空冷式 DOHC 2 バルブ4気筒
 最高出力 70ps/9000rpm 最大トルク5.7kg m/8500rpm』

などと見開きページで図解と共に説明されたりします。他にもゴチャゴチャと専門的な知識を並べられる所は多く、このようにそっちのマニアしか分からないような事に力を割いているのもいいですね。

そしてキャラクターですが、正義の熱血漢的な主人公より悪霊ライダーより、ひみこの首領と思われるハーレーのサイドカーに乗ってる謎の美女が、ラスト間近で明らかにあるその正体も含めて素晴らしすぎるのです。
MIYAYA-super-biking2.jpg
ハッピーエンドといえる終わりも、往年の宮谷作品と比べるとさわやかすぎて驚きますが、これが違和感なく成功してますね。

この「スーパーバイキング」の他に単行本に収録されているのは短編が三作品で、
1973年の「ワンペアプラスワン」
1972年の「嘆きの仮面ライダー」
1975年の「ダビデの眠る日」
です。
いずれも既に単行本収録済みですが、その単行本自体が絶版で入手困難のためレア化していましたので、これまた嬉しい事でした。
しかもこの自選集発売になった2007年時点での著者による大幅な加筆修正部分もあるので、単行本を持っていた方にも見ものです。

どれも宮谷先生の持ち味満載な名作ですね。
あまり多くを語らないようにしたいのですが、特に「ダビデの眠る日」は知名度も高めだと思いますが、政治的なテーマも含んで重すぎながらもアクション物の傑作。
私など若かりし頃に凄い衝撃を受けた事を思い出しますが、もうどこを取っても見事すぎて、比べてしまえばさすがに表題作も劣る所が目立ってしまうかな…それほど圧倒的な迫力で迫ってくるのですよ。

せっかく3年前に復刻されて読みやすくなった貴重な宮谷一彦作品ですので、この自選集を読んで貴方も『劇画』の凄さを感じて欲しい。
とかいってたらもしかして、出版社の倒産があったし…こんな最近出た本すらもレア化しているかもしれません。


わ 分かったぜ…この先に死の罠が仕掛けられてある…ってンだなっ
だ…だがよ……だったらなおのこと!追うっ!!

あ あいつもこの修羅場を突っ切ったんだ!



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  1. 2010/10/20(水) 23:49:06|
  2. 劇画
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

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