大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

劇画(108) 宮谷一彦 3 「肉弾時代」

今夜も続けて血と汗が飛び散る宮谷一彦作品で、「肉弾時代」(廣済堂刊)。
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1970年代の劇画好きにはバイブル的な雑誌である増刊ヤングコミック(少年画報社刊)にて掲載された『肉弾激餓三部作』の最後・三作目を飾ったのが表題作「肉弾時代」

冒頭数ページの絵…そして登場する三島由紀夫(一応名前は『M』とされています)に度肝を抜かれるオープニングから、彼が目を付けたボクサー・武居捨郎(たけいすてお)の人生へと進みます。
昭和20年に地獄の経験をしながら満州から日本へ帰ってきた武居は昭和34年、打たれまくった後に獣が復讐するような試合運びで相手を倒すボクサーとなっているのですが、当然パンチドランカーになり…キ印になってからの話運びが凄い。
Mは楯の会のようにクーデターを起こしますが、現実の『三島』とは違ってさらってきた権力亡者の政治家達に、壊れている武居捨郎VS美貌の元世界チャンピオン・ケイリーの試合を見せ付けるのです。その意図する所は・・・!?

説明文が多すぎるのに、それでもインテリ的なんだか意味が分からないこの作品は、まず話はどうでもいいので『絵』を楽しむべきだと思います。
変態的で、グロテスクな美しさがあり…まぁ私が興奮するこの部分も、アニメ化されやすいポップな絵ばかり見ている人にとっては嫌悪感が先に起こるかもしれません。
ページが真っ黒に見えるほどの描きこみが生む圧倒的な迫力!鍛え上げた『筋肉』を魅せたい作者の意図がタイトルでも分かります。
ハングリー極まる男の哀れな滅びの美学と、ナルシシズムの天才作家Mの暴走。どちらも退廃的な美しい。それも、果実が熟して腐って落ちる寸前に見せる最高で最後の美しさを漂わせるのです。

今作は1990年代中盤頃にサブカルチャー系のファン達に支持されていた雑誌QuickJapan(クイック・ジャパン)にて持ち上げられ、QJマンガ選書として復刻本も出版された事から、一躍一番有名な宮谷一彦作品となりました。
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この太田出版版は、著者による加筆・修正・描き下ろし原稿まで加えた『完全版』とされていますので、読む価値は高いでしょう。

どちらの版にも表題作「肉弾時代」の他に、「肉弾人生」が併録されています。
MIYAYA-nikudan-jidan2.jpg
(廣済堂版の裏ジャケにあるこちらの絵は「肉弾人生」の表紙絵)

『肉弾激餓三部作』の二作目に当たる作品ですが、この本には収録されていない三部作の一作目も同じ「肉弾人生」というタイトル。
なので一作目は『鬼蔵編』、二作目は『復活嫁売ジャイアンツ』と呼ばれています。

今度はジャイアント馬場そっくりな巨漢の男が厳しい環境から這い上がり、父の手で野球選手に仕立て上げられるが…という話で、これも見所・突っ込み所満載すぎます!
野球を題材にし、厳しい父と葛藤する所は「巨人の星」のパロディとも思えるのですが、世界観が違いすぎてその事に気付かないくらい。

どちらの作品も、絵が…画力が…または奇抜なストーリーの組み立ても目立ちますが、難解で文学的な『思想』らしき物も込められていて、理解できないまでも必要以上に裏を読み取ろうとしてしまいます。セリフなども本当に意味不明な物が多くて、何度も読み返して考えたりするのですが…やはり私の頭では分からないのでした。


お 俺は恐ろしいんだ・・ 恐ろしくてたまらない…
アゴが弱いってことだけじゃあない……
トレーニングして…おいしいものを食べさせてもらえばもらう程……
恐くなっていく……こ この筋肉だ!
こいつの獰猛なはたらき お 俺のヤワな骨格はたえられないよお!
いつも夢でうなされる いつか試合中に筋肉が骨をへし折る!



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  1. 2010/10/25(月) 23:23:07|
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

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