大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

劇画(112) とみ新蔵 1 南條範夫 4 「無明逆流れ―駿河城御前試合第一試合」

先日「シグルイ」を紹介したので、今夜はついでに南條範夫先生の同作品「駿河城御前試合」を原作にした時代劇画で、「無明逆流れ―駿河城御前試合第一試合」(マガジン・ファイブ刊)です。
TOMI-mumyo.jpg
↑これは2006年にレジェンドコミックシリーズで復刻された物ですが、オリジナル版は1967年に光伸書房から刊行された貸本時代劇です。

作者はとみ新蔵(臣新蔵)先生。
1945年の東京都生まれで、漫画家としてのキャリアは兄・平田弘史先生のアシスタントから。そう、平田先生の実弟ですよ。なのでどうしても比べられる事が多いと思いますが、ただの劇画家というよりは神に近い兄と比べて画力がどうとか言われるのは不幸すぎますね。でも作風も絵も似てるから…
自身は1964年に「邪険往来」でデビューし、代表作は「柳生連也武芸帖」「徳川おんな系図」「魔界転生」「柳生兵庫助」…等で、「無明逆流れ」の他の南條範夫作品や、他作家の時代小説もいくつも原作に描いています。

さて「無明逆流れ―駿河城御前試合第一試合」
兄である平田弘史先生が1966年にオムニバス小説「駿河城御前試合」を原作に劇画化した時にはこの第1試合「無明逆流れ」を描かなかったのに、弟はそれを補完するかのように劇画化した、と。
(平田版は他に第5試合と第7試合も描いてませんが)

寛永6年の駿府城、徳川忠長の面前行なわれた御前試合は真剣が用いられ、全11組の中でも特に壮烈だった第一試合に登場した剣士は、片腕の藤木源之助と盲目の伊良子清玄だった…
もちろん二人それぞれには連れ添う女、三重いくがいて、岩本虎眼牛股権左衛門なども登場しますが、すっかり「シグルイ」のイメージが付いているこの作品なので、キャラクターの違いに驚きます。こちらの方が原作に近い内容であり、「シグルイ」の方が山口貴由先生オリジナルの脚色を加えて長編作品にしちゃった異色作品なのですが。

ただし「無明逆流れ―駿河城御前試合第一試合」の方にも原作と違う部分は見られて、伊良子はいくが暴漢に襲われている所を助けて虎眼より先に彼女と会っている事になっていたり、盲目となって酷い目に遭い続ける伊良子をいくが探し出して再び剣の道に向かわせる、等のエピソードが追加されています!
つまりとみ新蔵先生は伊良子といくの愛の物語としての側面を強く描きたかったのですね。それは成功しているとも思います。

藤木の方も『片腕飛燕斬り』なる技を極めたり、三重に夜這いをかけるシーンなどもあるし、あとはもう一人の片輪者…伊良子に両腕を切られて復讐を誓ってつけ狙う黒伏甚内の存在自体がこの作品では重要ですね。
とまあどうしても比べてばかりになってしまいますが、優れた劇画作品ですし、ラストの決戦の敗者の姿は壮絶!


さらにこの本には「無明逆流れ」と同じく1967年に光伸書房から刊行された貸本時代劇「美童記」という傑作も併録されていて、こちらは同じ南條範夫小説の「男色大鑑」を原作としています。
舞台は五代目将軍・徳川綱吉の時代。天下泰平ながら男色が公然と持て囃された時代でもあり、そんな時に容姿端麗に生まれた男・伊丹弥之介の悲しい人生が描かれるのです。
自分の体を目当てに次から次へと男が群がり、争い…そして事件が起こり、弥之介は自らの顔を焼いて復讐の鬼となる!

巻末には幻の名盤解放同盟湯浅学さんが解説文を寄せていて、しかしそれはほぼ後半の「美童記」だけにしか触れず、男色について滔々と雄弁をふるっています。
それがのっけから『人体とはそもそも口と肛門を結ぶ筒からできている』などと湯浅節全開で攻めていてウケます。素晴らしいです。


勝った…俺は確かに勝ったのだ!
だがそれが何になるというのだ 人というものはすべて…いや常に愛を好しているもの…
伊良子清玄…彼奴ほど幸せな男はおるまい…



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  1. 2011/02/07(月) 23:38:22|
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

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