大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

劇画(114) 山口貴由 11 「蛮勇引力」

もう一回山口貴由作品を続けまして、今回は「蛮勇引力」(白泉社刊)。
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今までの少年誌連載から青年向け雑誌であるヤングアニマルに移って、2001年から翌年まで連載された近未来バトルアクション作品です。単行本は全4巻。

舞台は西暦2051年。東京は"神都"と名称を改めて、徳川神機力産業の生んだ新エネルギー・神機力をもとにしてスーパーテクノロジー社会を迎えています。
そんな未来社会に江戸時代…慶安4年に起こった"慶安の変"をからめた物語作りになっていて、主人公の名前はそのまま由比正雪。衣食住の全てを依存させる神機力は人の心を蝕むと、それを抹殺すべく生身の体と原始的な武器を中心に神都へ立ち向かう、27歳の『蛮勇なる者』。

神都は神機力により職を失った、つまり手作業系の職種で生計を立てていた者達を"浪人者"とし、社会から排除して人間狩りをしています。
それに対して由比正雪というカリスマを得た路上生活の浪人者達は蜂起し、死に物狂いの反撃をする…
正雪に救われて同士になる金井半兵衛響銀狐、それに普通の一神都民だった朝露歩も仲間になって作中ヒロインとして存在します。

政府・神都側の人間に目を向けてみると、徳川神機力産業の総帥で日本の首領でもある大ボスが徳川惑星。全ての面で化物級な、雷を操る事も出来るヤツ。
内閣総理大臣は、何と14歳の少女・中曽根まり。可愛い国民的アイドル総理で、その存在自体に後に明らかになる謎があります。
神都知事は、レーザーキャノン等の武器を体内に内蔵する石原十兵衛。この名でお分かりの通り現東京都知事の石原慎太郎がモデルでしょうが、風貌はその弟・石原裕次郎に似ています。
由比正雪が石原を殺した後の新知事に松平伊豆守信綱は全身神機力のロボット!

大ゴマにアオリ文字、インパクト強い硬派なキャラとキメ台詞、そして内臓…の、いつもの山口貴由節は健在ですが、青年誌掲載に移ったこの作品からコメディ要素は封印され、あからさまな性描写も増えました。
メッセージ色の強さはこの作品が一番かもしれないし、珍しいラブシーンもあり、あとは『詩』の多用も今作の特徴でしょうか。
意識しての事だと思うのですが、作品の完成度などより話も絵もB級、C級テイストを前面に出して壊しまくるハイパーバトルの展開も凄い!

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由比正雪達が神都湾の埋立地・台場にある失業者区画"やすらぎ"へ移動すると、元・原子力決死隊で当地のボス、丸橋忠弥という強力な味方も得るのですが、彼が身に付けている臨海終息作業用多重防護服「和(やまと)」が「覚悟のススメ」の強化外骨格を思い出して嬉しい。
もっと嬉しい銀狐と歩のお風呂シーンは、明らかに読者サービスでしょう。丸橋は銀狐に『一発やらせろ』と求愛してセックスシーンに繋がるし、正雪と歩…

正雪には本人も知らない出生の秘密があり、かつて沖海女だった母親の由比入鹿が徳川惑星を襲撃した際に『情けをくれてやる』と陵辱を受け、その際に正雪を宿したというのです。ラスボスが父、これは衝撃的な秘密!のようでいて使い古されたベタすぎる設定なので、書いちゃっていいでしょう。ちなみに後で入鹿のクローン・イルカイダーなんてのも登場しますよ。
さらに、やすらぎで比良部貝蔵という父親の如く慕っている人物と再会し、正雪の過去、神都を憎む思想のルーツなどもどんどん明らかになってきます。

正雪には胸に『敬人尊野蛮』の文字、背中に日本を守る龍の絵、という刺青があるのですが、ラスト直前に持ってきた彫られた時のエピソードも素晴らしいですねぇ。
神機に頼らず生きる信念を持つ正雪ですが、実は初期から香車撃というジェット靴などを使っているし、神都との最終決戦前には新たな戦手筋として、膝に香砲というミサイルなど全身武器装備もしてサイボーグ004(アルベルト・ハインリヒ)ばりになってます。
そこで機械を妄信するのはヤバイけど必要ではある事を伝えていて、猛烈な勢いで進んでついにラスボス・徳川惑星と対面すると問答が始まり、『人間は神の機の力を得る時 大切な何かを奪われてしまうんだ』と説く正雪と、『進化なり 人の精神もまた文明によって変化を遂げる』と説く徳川惑星とでどちらが正しいのか、答えは出してないように思えます。
急展開で全ての因縁が収束し、竜が天に昇る最終ページは神々しい…

ふっふっふ
肩書 所得 出身校 マイホーム 家柄 名声
そんなもの全て捨て去ったところに
男の値打ちがある!



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  1. 2011/02/24(木) 23:17:51|
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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