大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

楳図かずお(3) 「楳図かずお初期作品集」

今夜は楳図かずお先生の、「楳図かずお初期作品集」(中野書店刊)を紹介しましょう。
UMEZU-syoki-best1.jpg
これは世界最大級の書店街・神田神保町にある有名古書店・中野書店が1982年に復刻した、限定500部の箱入り激レアセット。

その名の通り楳図かずお先生の初期作品が、横から見るとこんな感じで入っていて、正に宝物と言える作りなのです。
UMEZU-syoki-best2.jpgUMEZU-syoki-best3.jpg

内容は、まず"覆刻複製本"が四冊あります。
簡単にでも順に紹介していくと、まず「森の兄妹」。楳図かずお先生が中学二年生時代に描き下ろした処女作(出版は高校生時代)として知られる単行本です。
UMEZU-syoki-best4.jpg
そのオリジナル本は1955年に、トモブック社から刊行されました。中を見るとペンネームはカタカナの『ウメズカズオ』表記、そして『山路一雄』が併用されています。少年時代に学校の先生が誰も『楳図』を読めなかったから、読者も読めないと困ると思って初期は本名を漢字そのままでは使わなかったのです。

内容はグリム童話の「ヘンゼルとグレーテル」を原作にした、ほぼ忠実な漫画化。面白い事にこれ、真中辺りの部分を少女漫画家の水谷武子先生が担当しています。
UMEZU-syoki-best5.jpg
つまり楳図かずお先生のデビュー作は他人との合作!まぁ映画界で言うとイタリアが生んだ世界のフェデリコ・フェリーニ(Federico Fellini)も共同監督でデビューしてますからね。楳図かずお先生もフェリーニと同じように、漫画キャリアの合計数を数える時は1/2を付けた方が良さそうです。『8 1/2』、『9 1/2』、『10 1/2』・・・というように。
内容ですが、この年齢にしてこの構成力・画力などのクオリティとは、やはり凄い。しかも可愛い作風の低学年向け漫画ですが、登場する魔女にだんだん描き込み加えすぎてきてグロテスクになり、後年の作風を彷彿とさせているのが嬉しい!何と漫画家のスタート時点から、ギャグとホラーの融合も試みているのです。

二冊目は「別世界」
UMEZU-syoki-best6.jpg
オリジナルは「森の兄妹」と同じく1955年にトモブック社より刊行された第二作目で、やはり読み切りの描き下ろし単行本。まだペンネームは『ウメズカズオ』ですね。
舞台は原始時代で、部族同士の争いを中心に恐竜や古代文明なども登場し、さらには一気にSFチックになるある秘密が…
果てしない砂漠の旅路、恐竜の登場、といった場面でいきなり絵と共に譜面が登場しています。つまりこれは場面にふさわしいBGM!譜面を読めない私にはその曲が悲しいのか勇ましい感じなのか全然分かりませんが、楳図かずお先生がこんな初期から実験精神を持っていた事が嬉しい。発売から何と50何年も経って進化し続けた漫画シーンでも、まだこの方法論は完成してませんよ!

三冊目は「底のない町」
UMEZU-syoki-best8.jpg
オリジナルは1956年、三島書房より刊行されていて、ペンネームは漢字の『楳図一雄』表記…つまり本名。
楳図かずお先生が高校卒業後に大阪の出版社を訪ねて持ち込みした作品で、出ました少年探偵・岬一郎シリーズです。この岬一郎探偵初登場となる、つまり江戸川乱歩の小説でいえば明智小五郎が初登場する「D坂の殺人事件」くらい重要な作品!
この時代は貸本漫画の世界で既に佐藤まさあき先生やさいとう・たかを先生が出てきていて、ハードボイルドな探偵モノが流行っていたのだそうです。
さらにどう見ても妖怪である老人が登場する怪奇漫画であり、強盗団と宝石もからんでミステリー的にも面白く、この降りしきる雨の効果…間違いなく初期を代表する傑作に仕上がっています。

四冊目は「幽霊を呼ぶ少女」
UMEZU-syoki-best7.jpg
オリジナルは1958年に三島書房より刊行。上記の作品以降いくつかの作品でキャリアを積んだ後に楳図先生が始めて描いた少女漫画で、この頃から今にまで繋がる『楳図かずお』というペンネームを使用し始めたと言われています。
少女達を主人公にした、ある"赤いクシ"にまつわる話。幽霊も登場するし、しかもその幽霊は少女自身の心が生んだ物かもしれない…明らかに後の怪奇作品のルーツであると言えるでしょう。

以上が"覆刻複製本"の四冊でしたが、もう一つ。
むしろ小学館クリエイティブによって次々と初期作品が復刻されている現在にあっては、これこそがレアだと言える…解説の附録冊子、「別冊 楳図かずお初期作品集」
UMEZU-syoki-best9.jpg

限定500部を証明する通し番号票はこれに付いていて、見返しには楳図先生ののサイン&イラストもあります!
UMEZU-syoki-best10.jpg
作品集のガイドブックになっていて、さらにインタビューが楳図かずお先生に始まり、関連人物である水谷たけ子、西岡務、佐川俊彦、ささやななえ、青池保子、いがらしゆみこ、竹宮恵子、山岸凉子という顔ぶれ。
続いて『のすたるじあぎゃらりー』として、何と同人誌(改漫)時代の"超"初期作品集を収録、他に『楳図かずお作品リスト』など。

さらにさらに、この「楳図かずお初期作品集」を発売前に予約して購買した者だけに付いたのが、このポスター!
UMEZU-syoki-best11.jpg

漫画黎明期に描かれたこれだけ昔の作品ですので、作者があの楳図先生だという予備知識や当時の時代背景も抜きに現在の読者の目で読んじゃうと、つまらないと言われるかもしれません。その意味でもあくまでコアなファン向けでしょうが…本格的にホラー漫画を描き始める前の作品群を読んでおく事も大事ですよ。
不思議と随所に後に現れる特徴の兆しみたいなモノも発見されたり、未熟な部分を突っ込んでみたり、いずれにしろ嬉しいばかりなのです。


おそろしい目に あいとうないものは でていくが、ええ
みろ あの家も この家も その家も あの家も この道も あの道も
おどっている おどっている
かくれてもだめじゃ どこへかくれてもだめじゃ
この町には底がない 底がないのじゃ



スポンサーサイト
  1. 2011/03/18(金) 23:33:38|
  2. 楳図かずお
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<旅行・紀行・街(98) 東京都杉並区阿佐ヶ谷 10 阿佐ヶ谷カレー計画…等 | ホーム | 映画「イップ・マン 序章」>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://mangabruce.blog107.fc2.com/tb.php/981-56e7f122
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

BRUCE

Author:BRUCE
BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する